これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date:  Fri, 27 Apr 2001 20:55:01 +0900
From:  tamamik@arttowermito.or.jp
Subject:  [atm-info,01181] La Biennale di Venezia 2001
To:  atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id:  <49256A3B.004137ED.00@david.arttowermito.or.jp>
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▼水戸芸術館ATM速報2001年4月27日発---------------------

日本館コミッショナーとして、また、開催中の「宇宙の旅」展
企画者として、お誕生月ながら超多忙な毎日を送っております、
逢坂恵理子・水戸芸術館現代美術センター芸術監督発の資料を
お届けいたします。

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第49回ヴェニス・ビエンナーレについて
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1.概要

総合コミッショナー:ハロルド・ゼーマン
国際展テーマ:「人間の台地」
(日本からは、折元立身(おりもと・たつみ)が出品作家の
  ひとりに選ばれています。)
日本館コミッショナー:逢坂恵理子
(水戸芸術館現代美術センター芸術監督)
日本館展示テーマ:「ファースト&スロー」
出品アーティスト:藤本由紀夫、畠山直哉、中村政人。

会場:ヴェニス市カステロ公園(Gialdini de Castello)
会期:一般公開/2001年 6月10日(日)〜11月4日(日)月曜休館
午前10時から午後 6時まで(入場は午後 5時)

内覧会:2001年6月6日(水)〜 8日(金)
午前10時から午後 8時まで、ただし8日は午後 2時まで
開会式:2001年 6月9日(土)

お問い合わせ:
国際交流基金 芸術交流部展示課 担当:古屋昌人
107-0021東京都港区赤坂 1-12-32 アーク森ビル20階
Tel:03-5562-3529 / Fax:03-5562-3500


2.日本館展示テーマ「ファースト&スロー」
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21世紀最初のヴェニス・ビエンナーレにおける日本館の展示テーマは
「ファースト&スロー」とした。すべてが一方向的に加速する都市の
なかで、異なった方向性をさぐる視点の存在を表現する。
この何年か私たちはいかに早く、効率よく、簡単に生活することが
できるかに腐心してきた。場所をとわず、どこにいっても同じモノを
入手できる便利さは、一方で、地域固有の文化の差異を内部から崩し
「画一性」を助長することにもなった。経済の「グローバリゼーショ
ン」は、世界各国の都市の姿をも近似化させた。私たちは生活を便利
に、そして快適にするために、たゆまぬ研究と技術革新を押し進めて
きたはずだが、一方、環境破壊や地球温暖化が地球全体の深刻な問題
となっている。日本は、欧米の様々な経済的、文化的断片を、まるで
ブラックホールのように、飲み込み消化して巨大な都市を出現させた
が、その姿は、画一的なようで決して欧米の国と同一ではない。モノ
と情報が氾濫する都市の中で、私たちはもはや一方向性の生き方に
甘んじることはできないのだが、そのことを自覚することもたやすく
はない。生活のスピードをゆるめ、目先の価値判断や既得権を変える
ことは容易にできないものだ。
「ファースト&スロー」をテーマとした展示では、都市の姿を通して、
3人の作家による複合的な視点を提示する。(逢坂恵理子)


3.「ファースト&スロー」日本館展示プラン
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共生を意識し、お互いに独立しながら干渉し合う 3人展として会場は
構成される。出品作家は、異なったメディアを用いて表現活動を
おこなっている、サウンド・アーティストの藤本由紀夫、写真家の
畠山直哉、アーティストの中村政人。会場はピロティ構造の日本館の
建築を考慮し、下のピロティに仮設の小部屋を設置して、上下のギャ
ラリーで作品を展示する。しかし、上下で展示を分断するのではなく、
上のホールの床にある開口部分を利用して、上と下のギャラリーの
気が流通し、微妙に連結しているような展示を試みた。

(1)ファースト(ギャラリー 1)
導入部は、畠山直哉の、東京を定点観測した70点に及ぶ組み写真と、
大阪球場の 2点の写真を展示し、変貌する都市のダイナミックな
様相を俯瞰させる。ハンバーガーショップ、マクドナルドの商標を
そのまま拡大した中村政人の作品は、高さ4.4mに及ぶ巨大な新作で、
ギャラリー全体が黄色い光で満たされる。中村は、その国の言語が
話せなくても、若者には世界共通言語とも言えるロゴの存在と、
マクドナルドがマニュアル化しているサービスの同質化に興味を持つ。
黄色い光と共に来館者は、電子キーボードから流れる和音の中を
徘徊することになる。音もまた、都市の特異な時空間を象徴する。
藤本由紀夫のサウンドは、ギャラリー全体を包み込む環境として設置
される。視覚・聴覚を刺激する展示は、都市のスピード、エネルギー、
画一性、電子音を身体化した空間を創り出す。

(2)スロー(ギャラリー 2)
チャコール・グレーに塗られた小さなギャラリーには、渋谷の地下
水道を撮影した畠山の写真『アンダーグラウンド』から 2点を展示
する。排水の流れ込む地下水道は、不潔で人の忌み嫌う場所であり
ながら、畠山の写真は、精神的な崇高さを感じさせる。ギャラリーの
片隅に展示した藤本の作品『Sugar1』は、ゆっくりと回転する
ガラス瓶の中の角砂糖が、まるでそこに人が存在するかのように
微妙な音を放つ。しかし来館者は、立ち止まって注意深く集中しな
ければ、その音にも気づかずに通り過ぎてしまうだろう。中央の
天井にしつらえられた穴からは、黄色い光が微かに漏れ、ゆったり
とした時間が流れるこの空間は、既成の視点を変換させる。


4.出品作品リスト
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藤本由紀夫
(1)Room (Venice) 2001
   電子キーボード(既製品) 各37x94x15cm
(2)Sugar 1 1995
   鉄、ガラス、コルク、角砂糖、モーター 15x44x15cm

畠山直哉
(1)Untitled 1989-2001 2001
   タイプC カラープリント 70点組 各22.5x46cm
(2)Untitled/Osaka 1998-1999
   タイプC カラープリント 2点組     各180x480cm
(3)Underground
   タイプC カラープリント 2点 各70x70cm

中村政人
(1)Q・S・C+mV/VV 2001
   アクリル、蛍光灯、鉄、ステンレス等 各440x542x40cm
   クリスタルガラス、蛍光灯 各12x12x2.5cm


5.作家略歴
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藤本由紀夫
1950年 愛知県名古屋市生まれ 現在、大阪在住

主な個展
1986「箱庭の音楽」ノ−スフォ−ト、大阪
1989「藤本由紀夫サウンド・オブジェ展」児玉画廊、大阪
1990「屋上の耳」児玉画廊、大阪
1992「Fate & Chance」ヒルサイド・ギャラリ−、東京
1999「美術館の遠足 1/10」西宮市大谷記念美術館、兵庫
(以降毎年1日1回限りの展覧会を10年間開催するプロジェクト展
  として実施中)

主なグループ展
1989「音のある美術」栃木県立美術館、栃木
1991「箱の世界」水戸芸術館、茨城
1992「UNDR」シャロッテンボ−美術館、コペンハ−ゲン
1997「第4回北九州ビエンナーレ 感覚の庭」北九州市立美術館、
     福岡
1999「五感の芸術」クンストハウス、ハンブルク
2001「ガーデン−現代美術をとおしてみる後楽園」後楽園、岡山


畠山直哉
1958 岩手県生まれ 現在、東京在住

主な個展
1983 ツァイト・フォト・サロン、東京
1986 東京造形大学、東京
1990 アラブ世界研究所、パリ
1994 ギャラリーNWハウス、東京。フォックス・タルボット博物館、
     レイコック(イギリス)
1999 ハヤカワ・マサタカ・ギャラリー、東京
2000 L. A. ギャラリー、フランクフルト
     コロンビア大学建築ギャラリー、ニューヨーク

主なグループ展
1991「メイク・ビリーヴ」ザ・フォトグラファーズ・ギャラリー、
    ロンドン他、イギリス巡回
1993「現代日本写真展」チューリヒ市立美術館
1994「液晶未来」フルーツ・マーケット・ギャラリー、
    エジンバラ他、東京、ヨーロッパ巡回
1997「欲望と虚無」クンストハレ・ウィーン
    「時間/視線/記憶 - 90年代美術における写真表現」
    東京都現代美術館、東京
1999「Wohin kein Auge reicht」ダイヒトルハーレン、
    ハンブルグ、ドイツ
2000「予兆:アジアの映像芸術展」国際交流基金アジアセンター、
    東京


中村政人
1963 秋田県大館市生まれ 現在、東京在住

主な個展
1993 なすび画廊、銀座路上、東京
1995「Origin of Flavor」ナビンギャラリーバンコク、
    バンコク、タイ
1996「トラウマトラウマ」SCAI THE BATHHOUSE、
    白石コンテンポラリーアート、東京
1998「QSC+mV」広島市現代美術館、広島
1999 「美術の教育」コマンドN、東京

主なグループ展
1992 中村と村上ーソウル』スペースオゾン、ソウル
1993「第29回今日の作家展 視えない現実」
    横浜市民ギャラリー、横浜
1994『新宿少年アート』新宿歌舞伎町全域、東京
    「第4回アジア美術展、時代を見つめる眼」
    福岡市美術館、福岡
1996「Abstract/Real」20世紀美術館、ウィーン、オーストリア
1998「THRESHOLD」 The Power Plant 、トロント、カナダ
1999「第3回アジアパシフィックトリエンナーレ」
    ブリスベン、オーストラリア
2000「低温火傷」東京都現代美術館、東京


6.資料
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ヴェニス・ビエンナーレについて

ヴェニス・ビエンナーレは、1985年以来ほぼ2年毎に実施されてきた
国際美術展として、100年以上の歴史を持つ。世界約50カ国からの
参加がある国際的に極めて知名度の高い展覧会であり、美術の
新しい動向を示す展覧会として知られている。
ヴェネチア映画際は、日本の一般の方々にもよく知られているが、
ヴェニスは現代美術の分野でも長い間、文化交流と新しい美術の振興、
普及に貢献してきた。
国際美術展としてのヴェニス・ビエンナーレでは、国を代表する
コミッショナーによって出品するアーティストが毎回選出される
「コミッショナー制度」を採用し、ヴェニス市の東に位置する
カステロ公園内に常設された各国のパビリオンを会場に
開催されている。
日本は1952年から参加し、アジアでは最も早く1956年に自国の
パビリオンを建設(吉阪隆正設計)している。初期は、横山大観や
鏑木清方のような日本画家も紹介されたが、1960年からは同時代の
アーティストによる新しい美術の動向を示す作品を展示するように
なり、他国との足並みが揃うようになった。
隔年 6月に開催されるヴェニス・ビエンナーレは、各国のパビリオン
展示とイタリア館によるテーマ展示に大別される。またカステロ公園
外の会場でも、グループ展やパビリオンを持たない国の展示など、
数多くの展覧会が同時に開催され、鑑賞者は国際的な現代美術の
状況を一望することができる。
全体のテーマやテーマ展を企画するのは、総合コミッショナーで、
毎回国際的に活躍している美術専門家が選出される。
各国のコミッショナーは、各パビリオンでの作家選定並びに展示を
担当する。日本では国際交流基金が窓口となり、毎回日本館のコミ
ッショナーを選出している。
各国の美術関係者が一堂に会し、同時代の美術を一堂に集める
ヴェニス・ビエンナーレは、現代美術の振興と国際文化交流に極めて
貴重な場を提供している。

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逢坂恵理子コミッショナーによる解説が魅力のツアー情報はこちら、
お申し込みは5月8日までです。
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1100/1158.html

http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---