これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date:  Fri, 20 Jul 2001 14:28:33 +0900
From:  tamamik@arttowermito.or.jp
Subject:  [atm-info,01231] Jul. 15 Towner/Watanabe Program
To:  atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id:  <49256A8F.001D8D70.00@david.arttowermito.or.jp>
X-Mail-Count: 01231

▼水戸芸術館ATM速報2001年7月20日発----------------------

オフィス内の雑多な音や音響的には簡易な設備をものともせず、
心に次々飛び込んできては驚きの扉を開く音の連なり。
いつもの自分の場所で仕事をしながら、モニタから流れ出る音に
時折耳を傾ける、スタッフにはごく日常の聞き方ですが、過日、
15日のラルフ・タウナーと渡辺香津美には、いわば音で呼吸する
宇宙に連れ出されたような感動を味わいました。
ホールでお聴きになった皆さまは、いかがでしたでしょうか?

記憶にとどまり続けるに違いない名演。info読者の皆さまのために
矢沢孝樹主任学芸員が出典併記でまとめました当日のプログラムを
お届けいたします。

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ラルフ・タウナー ギター・ソロ&デュオ featuring 渡辺香津美
http://www.arttowermito.or.jp/music/townerj.html
曲目リスト
2001年 7月15日[日] 水戸芸術館コンサートホールATM

各曲につけられた*以下の情報は、オリジナル・ヴァージョンが収録
されているタウナーのアルバムについてのものです。しかし、15日に
演奏されたヴァージョンはタウナー(&渡辺香津美)の即興によって
アルバム収録のものとは大幅な変貌を遂げています。
しかも全体的に11日の TLG公演よりもはるかに長く、集中力の高い
複雑なインプロヴィゼーションが展開していました。ことに前半の
「ANA」や「Anthem」からのナンバーは、ほとんど別物と言っても
よいでしょう。
タウナー氏は会場の音響の良さ、聴き手の集中力の高さを絶賛して
いましたが、そのような環境が彼に尋常ならざるテンションの高まり
をもたらしたに違いありません。
なおCDのお求めについては、水戸芸術館ミュージアムショップ
「コントルポアン」(TEL 029-227-0492)にお問い合わせください。
在庫のあるものもあります。

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1st -- Ralph Towner Solo

1 Joyful departure
*「ANA」(ECM 1611/537 023-2/97年)収録。

2 Anthem
*「Anthem」(ECM 1743/UCCE-1008/01年)収録。

3 The prowler
*「Anthem」収録。

4 Solitary woman
*「Anthem」収録。

5 Jamaica stopover
*「City of eyes」(ECM 1388/837 754-2)収録。

6 Green and golden
*「ANA」収録。

7 Goodbye pork-pie hat(by Charles Mingus)
*「Anthem」収録。ただし75年の「Matchbook」
(ECM 1056/UCCE-3016)には、ゲイリー・バートン(ヴァイヴ)
とのデュオ・ヴァージョンが収録されている。
チャールズ・ミンガスはタウナーのフェイヴァリットなのか、
96年のゲイリー・ピーコック(ベース)とのデュオ
「A Closer View」(ECM 1602/531 623-2)には"Mingusiana"
という作品が含まれている。

8 Tramonto
*オリジナル未確認。

9 Veldt
*「ANA」収録。

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2nd -- Ralph Towner & Kazumi Watanabe Duo

1 Renewal
*オリジナル未確認。

2 Beneath an evening sky
*オリジナル・ヴァージョンは79年、ケニー・ホィーラー(tp)、
デヴィッド・ダーリング(Vc)他との
「Old Friends,New Friends」に収録。
アルバム末尾を飾る作品だが、タウナー氏にこのアルバムの話を
したら「これは1曲目の"New Moon"と同じコード進行で書かれた、
対の曲なんだ」と話していた。なるほど確かにそうだ。
このロマンティックな作品はタウナー自身も気に入っているのか、
その後何度も再演している。まず85年のゲイリー・バートンとの
デュオ「Slide Show」(ECM 1306/827 257-2)において。
続いてタウナーのパーマネント・グループ、オレゴンの89年の
アルバム「45th Parallel」(Portrait RK44465)。ここでは
オーボエのポール・マキャンドレスにたっぷりメロディを吹かせ
ている。
そして「Oregon in Moscow」(Intuition int3303 2/00年)では
リッチなオレゴン&オーケストラ・ヴァージョン。

3 Short 'n stout
*「Open letter」(ECM 1462/511 980-2/92年)収録。
これはピーター・アースキン(ds)とのデュオ・アルバム。
今のところタウナーがシンセサイザーを使用した最後のリーダー・
アルバムでもある。

4 Babi's bossa(by Kazumi Watanabe)
*渡辺香津美の小曽根 真とのデュオ・アルバム「Dandyism」
(Domo POCJ1412/97年)収録。

5 Free piece(by Ralph Towner & Kazumi Watanabe)
*この日だけの、完全な即興作品。

6 Tango Piazzola(arr. by Kazumi Watanabe)
*原曲はピアソラの"リベルタンゴ"。今回の演奏は渡辺香津美の
99年のアルバム「One for all」(Domo POCJ1451)に収録された
ラリー・コリエル(gui)とのデュオ・ヴァージョンに近い。

7 Icarus
*オリジナルは73年のソロ・アルバム「Diary」
(ECM 1032/POCJ-2807)に収録。多重録音によるタウナー自身の
ピアノ&12弦ギターによる「一人デュオ」。
コーダで12弦が刻むストロークが鮮烈な印象を残す、タウナーの
代名詞のような名曲。その後、「Matchbook」「Oregon in Moscow」
で再演。オレゴンのステージでも頻繁に演奏されたという。
しかし今回の渡辺香津美とのデュオは、中盤での嵐のような
ストロークの応酬から、テーマが断片へとほどけてゆき空の彼方に
消えてゆくラストまで、筆者がかつて聴いたことのないほど
すさまじい演奏だった。

Encore:Nardis(by Bill Evans/Miles Davis)
*タウナーはプログラムでも述べているようにビル・エヴァンス
(P)からの影響を強く受けている。"Nardis"は、80年の
「Solo Concert」(ECM 1173/UCCE-3011)の完全ソロ・
ヴァージョンが有名。またゲイリー・ピーコック(b)との
デュオ・ヴァージョンもあり、阪神大震災被災者救援アルバム
「レインボー・ロータス」(ポリドールPOCP-7070・71、95年)に
収録されているが、オムニバスの企画盤であり、現在は入手困難
かもしれない。
参考までにタウナーのビル・エヴァンス・カヴァーはリーダー・
アルバム収録のものだけでも次のものがある。72年の
「Trios/Solos」(ECM 1025/833 328-2)収録の
"Re:Person I knew"。「Open Letter」収録の"Waltz for Debby"。
また「Anthem」にはビル・エヴァンス・トリオの名ベース奏者、
スコット・ラファロの"Gloria's Step"が収録されている。

以上文責:矢沢孝樹(水戸芸術館音楽部門主任学芸員)

**(  )内に作曲者が明示されているもの以外は、
ラルフ・タウナー作曲

http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---