これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date:  Wed, 10 Jul 2002 18:17:22 +0900
From:  tamamik@arttowermito.or.jp
Subject:  [atm-info,01436] A Secret Story on the "Entra Dance #15, SWAN LAKE" by Yasuhisa	 Nagayama
To:  atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id:  <49256BF2.0032E5E8.00@david.arttowermito.or.jp>
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▼水戸芸術館ATM速報2002年7月10日発--------------------

atm-info受信の皆さまへ、その始まりについて、を、ダイレクトに。
長山泰久・館演劇部門学芸員より、「『エントラ/スワンレイク』
秘話その1」をお届けいたします。

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その曲はずっと気になっていた。

始まりは昨年の夏、
盟友エルヴェ・ロブが小さな作品を発表するというので
他の仕事にもかこつけて平松と長山が訪れたフランスでのこと。
そのパフォーマンスはルーアンという街のさらに郊外で行なう
という。パリから電車に乗り、さらにルーアンの駅からは車に乗り、
しばらく行く。
6月末のフランスは最高にいい天気で、つまり暑くて、
そしてこんな田舎はとにかく景色がいい。
着いたのはルーアンの一帯を所有する領主の館、
フランスではあるけれど英国風に言えばマナーハウスだ。
つまり、エルヴェが作品を発表するのは、地域の芸術家として、
その周辺を所有しパトロネージする領主が
新しく越してきたお披露目を兼ねて企画したパフォーマンス、
というわけだ。
そういうことがわかったのは現地へ着いてから
わずかなフランス語と英語と推理力によってなので
勝手なストーリーを捏造しているかもしれないが。
エルヴェたちの他にも周辺に住んでパリで活動をしているらしい
弦楽四重奏団の演奏や、詩人による自作詩の朗読などが
あるらしかった。

きっと馬が八頭くらい横一列になって走れそうな広い道を
両脇にならぶ大きな木が作る影に喜びながら歩く。
視界の先の方にレンガ造りの「お館」が。
6月末のフランスは真夏のような陽射しなのでぜんぜんそんな
ことはないんだが、
これが冬だったりしたらちょっと恐ろしげかもしれない、ような、
古く美しい館。
その方角から聞こえるのは。

「これってチャイコ?」
「白鳥だよね」
「あ、ここ三羽か」
というような話をしながら歩く平松と長山。
聞こえて来るのはチャイコフスキーの白鳥の湖だ。紛れもなく。
例え「悲愴」がわからなくても、
我々が「白鳥」を聞き違えるはずはない。
「でもなぜここで白鳥?」
解答はすぐに出た。
お館の前庭には特設ステージ設えてあり、
緑のリノリウムが敷かれている。
その上に立っているのは
黄色い白衣、あ、変だなコレは。
黄色く染めた白衣を着ているダンサーたち。
しかも全員サングラス装着。
曲はやはり「白鳥の湖」。聞こえてきた音源はここにあった。
しかし踊っているのは
エルヴェ・ロブと作品づくりをしているダンサーたち。
ということは、もちろん振付けはクラシックバレエのそれではなく、
コンテンポラリー。
しかも、その場でアイディアが出され、どんどん変わっていく。
ほぼ真夏の陽射し。遮るものは何もない広い庭の特設ステージ。
熱い板の上で踊るのに等しいらしく、
ダンサーたちは実はすこしだれていた。
そのだらだらとしたリハーサルを、これまたのんびりと眺めながら、
「『白鳥湖(ハクチョウコ)』っていい曲だなー」
「これでバレエじゃないってのがへそまがりでいいよね」
「あーっここでは出なきゃ、前へ」
などと言い合う平松と長山。

それが始まりでした。

「白鳥の湖」はいうまでもなくクラシックバレエの古典中の古典。
この一作を選ぶという企画だったらダントツ一位間違いなしの名曲。
しかも平松も長山も曲を聞けば踊り出せるくらいには振付けが
身体に染み込んでしまっている作品。
その呪縛からは解放されたい。せめて抗ってみたい。
しかもパロディでもなく。

そういう始まりでした。今にして思えば。

そして、「エントランスで踊ってみる」でも
たくさん人が並んでるのを観たいよね、とか
ソロもいいけど群舞の気持ち良さはまた別だよね、とか
言い合っているうちに
いずれエントランスでたくさんの人で「白鳥の湖」の曲で、
というのは
平松と長山の密かな企みとなったのでした。

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ACMダンス企画エントランスで踊ってみる15『SWAN LAKE』
7月14日(日) 17:00 入場無料
http://www.arttowermito.or.jp/play/p14nendoj.html#edance15

http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---