これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date: Thu, 12 Dec 2002 20:59:26 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,01524] "Kore Minna Shibai no Hanashi" #1 by Koshiro Matsumoto
To: atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id: <49256C8D.0041C6FC.00@david.arttowermito.or.jp>
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▼水戸芸術館ATM速報2002年12月12日発--------------------

水戸芸術館演劇部門 芸術監督・ACM劇場 劇場支配人
松本小四郎から webのお客様へ直送、
新鮮美味かつ滋養豊富な「これみんな芝居の話」を
お届けいたします。(本日第一回)

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松本小四郎「これみんな芝居の話」2002・12・9
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12月 9日、『スカパン』の顔合わせが東京であった。
『スカパン』はフランスの喜劇作家モリエールの晩年の傑作品。
これまで毎年 1月の ACM劇場プロデュース公演では、
日本の現代演劇を代表する劇作家の作品を上演してきましたが、
今年からは串田和美さんに演出をお願いして、
もう少し広い視点で演劇を考えてみるのも面白いのではないか、
ということで喜劇に焦点を合わせて、
いろんな作品を上演していくことになりました。
フランス語でいう「COMEDIE」が日本語訳の「喜劇」でいいのかと
いう議論が、12月 9日の顔合わせの日にありました。
ラシーヌの「TRAGEDIE」に対して「COMEDIE」という言葉が
おそらく使われたのだと思います。その違いは何かといいますと、
まずテキストがあり、そのテキストを使って新しい作品にする、
つまりギリシャ悲劇を17世紀の悲劇にするということをラシーヌは
やったのだと思います。それに対して、モリエールは15世紀から
16世紀にかけて登場してきた笑劇、いわゆる当時の人間の日常生活を
道化的な人物とシリアスな人物を巧みに絡み合わせて、
人間や社会を風刺する芝居をつくり、それを「COMEDIE」と呼んだの
だと思います。
喜劇という言葉から私たちが想像するものよりも、もう少し自由で
人間的で、俳優は笑わそうと思わなくても、演戯や言葉の喋り方で、
観客は笑い、何かを考えられるようなところに、「COMEDIE」という
ジャンルの本質があるのではないかと思います。
『スカパン』の水戸公演は来年 1月24日(金)が初日です。

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松本小四郎「これみんな芝居の話」2002・12・11
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『スカパン』の稽古の前に串田和美さんと話をした。
この半年ぐらい、はこれからの演劇はどうなるのか、どうしたら
いいのか、ということで、串田さんと話しを何度もしてきた。
じつは演劇がどうなるのか、誰も予想できないような時代状況に
なっていることは二人とも暗黙の了解事項として共有している。
今日の話は、もう少し具体的な話だった。『スカパン』の舞台を
どうするかという話。ACM劇場のもっている雰囲気を生かしつつ、
モリエールの芝居ならこうした舞台がいいのではないかという、
そういう舞台をどうつくるかという話で、でも、二人とも何となく
具体的なイメージは共有できているようだ。
午後 4時過ぎに、世田谷パブリックシアターのテクニカル・
ディレクター、眞野純氏が稽古場へ来られた。舞台関係の打ち合せを
して、それからしばらく世田谷ぱパブリックシアターの芸術監督に
就任した野村萬斎氏について話した。12月 6日に、世田谷パブリック
シアターで萬斎さんと舞踊家伊藤キムさんのトークとパフォーマンス
があり、私はそれを観て、萬斎さんの今後の活動が非常に楽しみに
なった。この三十年狂言を観てきたが、彼は狂言のなかでまったく
新しい領域をちゃんときり拓いてくれる人だと思う。私の言葉で
いえば、「狂言を演劇から芝居へ」もっていける数少ない狂言師で
ある。そういう志向でいま狂言をやっている人がもう一人いる。
その人は誰か? まだ明かしたくないのです。

http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---