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Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Fri, 5 Mar 2004 16:33:40 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,01752] Luciano Berio (1925-2003) Memorial Concert
To: atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id: <49256E4E.0029892E.00@david.arttowermito.or.jp>
X-Mail-Count: 01752

▼水戸芸術館ATM速報2004年3月5日発-----------------------

追い立てられるように過ぎていく時間の中で、私たちは日々生きて
います。そして、時折、時間の流れに身を置く自分をもうひとりの
自分が眺めながら、こう問いかけることがあります。
「自分って一体何なんだろう?」
その答えを探そうと、色々な言葉を思い浮かべて繋いでみるけれど、
言葉は空しく宙を舞い、本当のことはいつも捕まえられずに掌から
こぼれ落ちてしまいます。

2003年5月27日、イタリアの作曲家ルチアーノ・ベリオがこの世を
去りました。ベリオは「声」の作曲家であったと人々は言います。
多くの声は言葉を伝えるために発せられます。しかし、声の重要性は
言葉を介する意味的な領域にとどまるものではありません。この世に
生まれて最初に発せられる子供の泣き声は、誕生の証しそのものです。
そして本当に嬉しい時や本当に悲しい時、人は言葉にならない声を
あげるのです。また、人間だけではなく、多くの動物にとっても、
声は最も大切な音響現象です。ベリオが追い求めたのは、そうした声
だったのです。「自分って一体何なんだろう?」という問いかけに
対し、ベリオは私たちが「生きている」ことのもっとも明白な証しで
ある「身体」という始原の大地から発せられる「声」のなかに、その
答えを見つけようとしたのです。

ベリオの創作の足跡を辿りながら、あなたも「自分探し」の旅に
出発しませんか?

担当:中村晃(水戸芸術館音楽部門学芸員)

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没後1周年・追悼企画  ベリオの肖像
-- 私がわたしであるために、始原の大地を旅した作曲家 --
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2004年 6月 5日[土]
プレ上演16:10〜16:40 / 講演会17:00〜18:00 / 演奏会18:30開演
主催:財団法人水戸市芸術振興財団
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プレ上演 ベリオの電子音楽作品の紹介
曲目:ベリオ <顔>[キャシー・バーベリアンの録音された声と
2トラック・テープのための](1961)*日本初演*
Berio: Visage for the 2-track tape with recorded voice of
       Cathy Berberian (1961)[Japan premiere]
会場:水戸芸術館コンサートホールATM
日時:2004年 6月 5日[土]16:00開場・16:10 開演(16:40終演)
*演奏会のチケットでご入場いただけます。(お出入り自由)
<顔>は、当初イタリア・RAIのラジオ放送のために作られたにも
かかわらず、「猥雑」なものとして放送用電波から追放された
という経緯をもつ問題作。「声の劇場」と称された豊沃な声の様式を
もつキャシー・バーベリアンによるうめき声、笑い声、慟哭の声、
叫び声、意味をもたない擬似言語によるおしゃべりの声などが、
電子音と組み合わされたテープ作品です。
意味を伝えるための言葉をもたないバーベリアンの声から、
あなたは何を受け止めますか?!
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第1部 講演会「ベリオが影響を受けた作家たち
              -- ジョイス、ベケットが描く現代の人間像 --」
出演:柳瀬尚紀(英文学者)、白石美雪(音楽学者、音楽評論家)
会場:水戸芸術館コンサートホールATM
日時:2004年6月5日[土]16:45開場・17:00開演(18:00終了予定)
*演奏会のチケットでご入場いただけます。
ベリオは、言葉と音楽の関係に大きな関心をもち、両者を結ぶもの
として声を介在させながら、しばしば自作の中に、ジェイムズ・
ジョイスやサミュエル・ベケットなどの戯曲や小説をテクストとして
引用しています。ジョイスやベケットは、言葉とそれによって伝え
られる意味というものと格闘しながら、人間の有り様を探し続けた
文学者たちです。そして、ベリオはジョイスやベケットの作品を
みずからの音楽の中に息づかせることで、彼自身もジョイスや
ベケットと同じように、自分探し、人間探しを行う旅人であろうと
しました。ジョイスやベケットは、20世紀の文学に大きな足跡を
残したといわれていますが、その著作を読み解くのはなかなか
たいへんなことです。本講演会は、英文学者の柳瀬尚紀さんと
音楽学者・評論家の白石美雪さんをお招きして、ベリオに大きな
影響を与えた文学者・ジョイスやベケットの創作について、
おはなしいただきます。

柳瀬尚紀
Naoki Yanase
英文学者。1943年北海道根室市生れ。1970年早稲田大学大学院
博士課程修了。
著書に『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』『フィネガン辛航紀』
『翻訳はいかにすべきか』『広辞苑を読む』『猫舌流 英語練習帖』
『猫舌三昧』『言の葉三昧』『辞書を読む愉楽』『猫と馬の居る書斎』
『突然変異幻語対談』(筒井康隆氏と共著)『対局する言葉』(羽生善治
氏と共著)他。訳書に、キャロル、リア、ボルヘス、D・バーセルミ、
E・ジョング、ホフスタッター『ゲーデル、エッシャー、バッハ』
(共訳)など多数。1993年『フィネガンズ・ウェイク』完訳。
『ユリシーズ』翻訳刊行中。

白石美雪
Miyuki Shiraishi
音楽学者、音楽評論家。東京生まれ。東京芸術大学大学院音楽研究科
修了。
著書に『はじめての音楽史』『武満徹 音の河のゆくえ』(分担執筆)。
訳書に『インターメディアの詩学』(共訳)など。
朝日新聞で音楽会評を執筆。
NHK-FMの「現代の音楽」にレギュラー出演。
現在、武蔵野美術大学教授、国立音楽大学非常勤講師。
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第2部  ベリオ作品による演奏会
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日時:2004年 6月 5日[土]18:00開場・18:30 開演
会場:水戸芸術館コンサートホールATM

・差異[フルート、クラリネット、ハープ、ヴィオラ、チェロと
        テープのための](1959)*日本初演*
  Differences for flute, clarinet, harp, viola, cello
  and tape(1959)[Japan premiere]
・セクエンツァIII[女声のための](1966)
  Sequenza III for female voice (1966)
・水の鍵盤 (1965)/土の鍵盤 (1969)
・空気の鍵盤 (1985)/火の鍵盤(1989)[ピアノのための]
  Wasserklavier (1965)/Erdenklavier(1969)
  Luftklavier(1985) /Feuerklavier(1989) for piano
・グロス[弦楽四重奏のための](1997)
  Glosse for string quartet(1997)
・オー・キング [メゾ・ソプラノとフルート、クラリネット、
  ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための](1968)
  O King for mezzo-soprano, flute, clarinet, violin, cello
  and piano(1968)
・夜想曲(四重奏III)-- 夜に黙して語られなかったことばを・・・
  -- [弦楽四重奏のための](1993)
  Notturno (Quartetto III)... Ihr das erschwiegene Wort...
  for string quartet (1993)
・セクエンツァXIV [チェロのための](2002)
  Sequenza XIV  for cello(2002)

出演:畠中恵子(ソプラノ)、木ノ脇道元(フルート)、
      菊地秀夫(クラリネット)、アルディッティ弦楽四重奏団
      木村茉莉(ハープ)、中川賢一(指揮、ピアノ)、
      白石美雪(おはなし)

音楽学者・評論家の白石美雪さんのおはなしを交えながら、
ベリオ作品の足跡を追う演奏会です。ベリオは器楽作品のなかにも、
「声」から得られた音楽語法を取り入れています。それは「声」と
「楽器」の交感ともよべそうな世界です。
<差異>は、第2次大戦後多くの作曲家たちが、その新たなひびきに
夢を抱いた電子音響が、器楽と組み合わされた作品です。
<セクエンツァ>は、さまざまな独奏楽器の表現の可能性を極限に
まで追及したベリオのライフ・ワークとも呼べる作品群です。
<セクエンツァIII>は、ベリオの「声」の探究のもっとも輝かしい
結晶で、愛妻キャシー・バーベリアンの為に書かれました。
<セクエンツァXIV>は、ベリオが残した最後のセクエンツァで、
献呈されたチェリストのロハン・デ・サラムによる演奏が水戸でも
実現します。神話的イメージを標題にもつ<水の鍵盤>、
<土の鍵盤>、<空気の鍵盤>、<火の鍵盤>は、美しくも叙情性に
溢れたピアノのための小品です。<オー・キング>は、アメリカの
黒人解放の指導者マーチン・ルサー・キング牧師の名前だけを
テクストとした声の作品です。そして、現代の作曲家たちから絶大な
信頼を集めているアルディッティ弦楽四重奏団が演奏するのが
<グロス>と<夜想曲>。「グロス」とは音楽的な身ぶりを表わす
言葉。そして、<夜想曲>は「夜に黙して語られなかったことばを
・・・」という副題をもつ幻想的な音楽です。

料金:3,500円(全席指定、プレ上演・講演会・演奏会の全料金)
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チケット発売:2004年 3月 6日(土)
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・館エントランスホールチケットカウンター(9:30〜18:00、月曜休)
・館チケット予約センター Tel. 029-231-8000(9:30〜18:00、月曜休)
・ATM速報受信のお客様のご予約はメールでも承ります。(13:00〜)
mailto:ticket@arttowermito.or.jp
・MUSIC SHOP かわまた Tel. 029-226-0351
・ヤマハミュージック関東 Tel. 029-224-2861
・チケットぴあ Tel. 0570-02-9990
・CNプレイガイド Tel. 03-5802-9990

メールでのご予約は上記アドレス宛、発売日13:00以降の、
館サーバ受信タイムスタンプとなるようお送りください。
ご予約のための様式(音楽・演劇共通)をお持ちでない方は、
お手数ですが、上記アドレスまで、事前にご請求ください。

ATM速報受信のお客様に限り、下記館ウェブサイトからもお申し込み
いただけます。(発売日10:00以降、公演前日または完売まで無休)
https://www.arttowermito.or.jp/t/authenticate.cgi

公演当日までご来館不要、チケットお届けまで最速の新サービスも
ご用意。資料のご請求は下記(SSL暗号化通信)よりどうぞ。
https://www.arttowermito.or.jp/sf/sendform.html
1. 件名欄には「新サービス資料請求」とご入力ください。
2. 資料は郵送でお送りいたします。ご氏名・郵便番号とご住所は
   必ずご入力ください。

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畠中恵子(ソプラノ)Keiko Hatanaka, soprano
東京芸術大学オペラ科、同大学院修士課程ソロ科修了。
在学中の1989年、サントリー音楽財団主催のコンサートにて、
ブーレーズの<ル・マルトー・サン・メートル>を歌いコンサート・
デビュー。以後、声のための新しい作品を数多く初演、紹介する。
モーツァルト音楽コンクール第3位、前田賞受賞。出光音楽賞受賞。
木村宏子、秋山衛、小島琢磨、エディット・セリグ・パペ、
クリスチャン・エダ・ピエール、平山美智子に師事。クラシック音楽
とアヴァンギャルドな声を絶妙のバランスで両立させた演奏は、
ソフィア・クバイドゥーリナから「余分なものの一切ない、本物の
芸術家の歌唱」と賞賛された。ベリオの<セクエンツァ III>を含む
CD「武満徹/環礁」は、ウィーン・ウニヴェルザール誌の"New on CD"
に推薦されている。2003年、ブカレスト国際音楽フェスティヴァルに
出演。また、ボローニャ大学の招待に応じ、イタリアで演奏を行う。
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木ノ脇道元(フルート)Dogen Kinowaki, flute
フルートを武田又彦、金昌国、細川順三、ピエール-イヴ・アルトー
に師事。同世代の音楽を中心に活動を展開している。アリオン音楽賞
受賞。出光音楽賞受賞。アンサンブル・ノマドのメンバーとしても
活動を行う。
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菊地秀夫(クラリネット)Hideo Kikuchi, clarinet
1994年桐朋学園大学卒業、96年同大学研究科修了。クラリネットを
二宮和子に、室内楽を鈴木良昭、三善晃、徳永二男に師事。
93年、現代音楽演奏コンクール「競楽II」にて第2位。
94年、東京文化会館新進音楽家デビューオーディション合格、
同コンサートに出演。95年、「新しい世代の芸術祭」にてリサイタル。
96年、ドイツのダルムシュタット国際現代音楽夏期講習に参加、
シュティペンディエン賞を得、98年の同音楽祭に招待される。
97年よりアンサンブル・ノマドのメンバー。2001年、サントリー・
サマーフェスティヴァルにて、ストラヴィンスキー <エボニー協奏
曲>のソリストを務める。03年、アンサンブル・ノマドが第2回
佐治敬三賞を受賞。現在は、ノマドでの活動を中心に、スタジオでの
レコーディングや、ライブハウス等での活動も始める。
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アルディッティ弦楽四重奏団 Arditti String Quartet
・アーヴィン・アルディッティ(vn)・グレアム・ジェニングズ(vn)
・ラルフ・エーラース(va)・ロハン・デ・サラム(vc)
1974年にアーヴィン・アルディッティによって結成。
現代音楽と20世紀初頭の作品における卓越した演奏と解釈で、
世界的な名声を得ている。1年の間に50曲を世界初演。ケージ、
カーター、フェルドマン、ファーニホウ等の作品を初演する。
82年から96年まで毎年、ダルムシュタット国際現代音楽夏季講習で、
演奏家と作曲家のためのワークショップを行う。
発売CDは100タイトルを超える。99年には、これまでの功績に対し
エルンスト・フォン・シーメンス音楽賞が贈られた。日本デビューは
88年、武満徹が主宰していたミュージック・トゥデイのステージで
ある。以来、数回来日を果たし、2000年、東京での7時間マラソン
コンサートでも、自選20世紀の名曲14曲を演奏。
01年秋、メルボルン音楽祭で5夜連続の演奏会を行う。
02年、ドイツ人作曲家リームの50歳の誕生年を記念し、ヨーロッパ
各地で氏の作品を特集。同年6月、来日し東京をはじめ各地で演奏。
また、イギリス・ハダースフィールドやベルギー・アルス・ムジカ
など各国の現代音楽祭に招かれ、その国の作曲家の作品を初演する。
水戸芸術館では00年5月にベルク<抒情組曲>、クセナキス
<テトラス>などのプログラムで演奏会を行っている。
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木村茉莉(ハープ)Mari Kimura, harp
9歳よりハープをヨゼフ・モルナールに師事。1962年、東京芸術大学
音楽学部附属高校ハープ科に入学。63年、パリ国立音楽院ハープ科に
入学。ジェラール・デヴォス教授に師事。65年より67年までフランス
政府給費留学生となる。この間、パリをはじめフランス各地で
演奏活動を行う。69年に帰国し、第1回のリサイタルを行う。以後、
オーケストラのメンバーやソリストとして活躍。77年、アンサンブル・
ヴァンドリアンに参加。この他、ミュージック・トゥデイ、民音現代
作曲音楽祭、インターリンクフェスティヴァル等多くの音楽祭に参加。
現代ハープ演奏のスペシャリストとして数多くの曲を初演し、本人の
ために書かれた作品も多い。82年第1回中島健蔵賞をヴァンドリアン
として受賞。
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中川賢一(指揮、ピアノ)Ken'ichi Nakagawa, conductor and piano
桐朋学園音楽学部演奏学科ピアノ専攻卒業後渡欧し、ベルギー王立
アントワープ音楽院ハイディプロマをグレートディスティンクション
で卒業後スぺシャリゼーションコースに学び、首席で卒業。ピアノ、
1997年オランダ・ガウデアムス国際現代音楽コンクール第3位。パリ・
ロワイヨモン音楽祭、ベルギー・アルス・ムジカ音楽祭、イギリス・
ハダースフィールド音楽祭、ポルトガル・エスピーニョ音楽祭出演等
をはじめベルギー、オランダ、スイス、ハンガリー、フランスなどで
演奏活動を行う。在欧中はベルギーの現代音楽アンサンブル、
イクトゥス・アンサンブル、アンサンブル・シャンダクションの
メンバーとして活動もした。98年より2000年まで東京オペラシティで
のコンテンポラリー・ミュージック・アンサンブル、アンサンブル・
ノマドのピアニスト、指揮者として年間5回の定期公演を東京オペラ
シティで行い、NHK・FMで放送される。草津国際音楽祭、北とぴあ
国際音楽祭、武生国際音楽祭、サントリー・サマーフェスティヴァル
等に出演。01年度宮城県芸術選奨新人賞受賞。

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ルチアーノ・ベリオ Luciano Berio
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1925年、イタリアのインペリア県オネーリャ生まれ。
6歳から父エルネストと祖父アドルフォに音楽の手ほどきを受ける。
第2次世界大戦後、ミラノ大学の法学部に籍を置き、ミラノ音楽院で
ゲディーニに作曲を学ぶ。50年、作曲のディプロマを取得、
アメリカの歌手キャシー・バーベリアンと最初の結婚をする。
彼女はあらゆる発声を駆使するヴィルトゥオーソで、以後ベリオの
作品の理想的な演奏者となる。51年、クーセヴィツキー財団の
奨学金を得てタングルウッドでダラピッコラの講習に出席し、
セリー音楽を学ぶ。54年、バーゼルでマデルナ、プスール、
シュトックハウゼンと出会い、さらに現代音楽の最大の発信地で
あったダルムシュタット国際現代音楽夏季講習に参加し始める。
55年、マデルナと共同してミラノのイタリア放送協会に電子音楽
スタジオを開設。63年、アメリカに本拠を移し、オーランドの
ミルズ・カレッジで教えたあと、ジュリアード音楽院で作曲を教え、
現代音楽の演奏を専門に行うジュリアード・アンサンブルを創設する。
創作活動の面ではヨーロッパ文化財団賞、シベリウス賞、イタリア賞
など幾つかの賞を獲得した。72年、イタリアに帰国。74年から
80年まではパリのIRCAM(音響・音楽の探究と調整の研究所)の
部門責任者に任命される。87年、ヴィッラ・ストロッツィに新たな
研究センターであるテンポ・レアーレを開設し、独自のコンピュータ
・システムTRALIS(Tempo Peale Interactive Location System)を
用いて創作活動を行う。96年、高松宮記念世界文化賞を受賞。
2003年 5月27日逝去。
第2次世界大戦後の多くの作曲家と同じように、ベリオもセリーの
技法から創作を出発しているが、ブーレーズやシュトックハウゼン
といった同時代の作曲家がセリーの技法を突き進め、総音列主義と
よばれる前衛音楽の潮流を築いていったのに対し、彼はあくまで
自身の感性に従い、響きに重点をおいた創作の姿勢を貫いた。それは、
伝統ということに対して、他の多くの前衛作曲家たちのように拒絶
するのではなく、自らの血にも受け継がれているのだということの
意志表示でもあった。ベリオの創作の最大の特徴は、言葉と声の問題
を掘り下げた点にある。ウンベルト・エーコとともにソシュールの
言語学を研究し、ダンテ、サングイネーティ、ジョイス、ベケット
などのテクストを自作に引用する。それらのテクストは、分解され、
あるいは音素にまで砕かれることで、声は純粋な音色として扱われる。
しかし、その音色は無限の意味論的な暗示の光輪に包まれている。

http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---