これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date: Thu, 10 Jun 2004 15:06:48 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,01795] Interview with Ralf Marschalleck / Topics on "Brass on Fire"
To: atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id: <49256EAF.00219546.00@david.arttowermito.or.jp>
X-Mail-Count: 01795

▼水戸芸術館ATM速報2004年6月10日発 special -----------

エモーショナルに言えば、
  人生とは、1曲の長い歌のようなものかもしれない
ラルフ・マルシャレック

Q:あなたはジプシー文化人々の考え方へのどんなところに
  魅了されるのですか。
A:メランコリーな感覚、かな。
  「泣く」「悲しい」という意味ではなくて、
  望みをなくしているんだけれど、でも望みを持っている...
  そんな感情。
  ジプシーは常に、「生と死」という感情を身近に持っているんだ。
  若い人でも命は突如なくなる、
  反対に、突然運が向くこともあるかもしれない、
  金持ちになったり成功したり、突然死ぬこともある。
  彼らは、神から授かった運命を信じている。ファタリズム、
  運命主義者なんだ。命はミラクルでマジックだと思っている。
  だからあまり将来のことは考えない。
  むしろ、日々のこと、目の前のことに関心が向く。
Q:では、努力して運命を変えていこうという気もあまりないの
  ですか。
A:明日、死ぬかもしれない、という思いがいつもどこかにあるからね。
  お金もずっと持ってはいられないものだ。
  だから使うし、あげてしまったりする。
Q:あなたのいうメランコリー・フィーリングというのは
  これらに繋がっているのですか。
A:そう、運命は自分の手中にあるのではない、
  コントロールできるものではない、奪われてしまうもの、
  という考え方、その感情だ。
  一方で、自由奔放で人生の大きな喜びがある。
  人生を楽しむのが最高にうまい。喜びに満ちている。
  このコントラストが僕をものすごく惹き付ける。
  これがジプシーらしさだと思う。
  彼らはテンプリメント(瞬時)だ。
  今、哀しんでいるかと思うと、瞬時に最高に幸せになる。
Q:ジプシー社会の魅力と弊害は何だと思いますか。
A:ジプシーの社会では、親類関係、家族のつながりが
  大変重んじられる。彼らは4世代が共に同じ屋根の下に暮らす。
  驚くほど強いきずなを持ち、彼ら自身の言語で話し、
  書き言葉を持たず口承のみで受け継がれる。
  貧しくとも、機会さえあればいつでも人生の喜びを表現し、
  未来の事は気にせず、その瞬間を楽しむ事が出来る。
  また、素晴らしいもてなしの心を持ち、
  客にはパンの最後の一片まで惜しみなく与える。
  金(ゴールド)やお金が好きで、金持ちになる事が望む一方、
  金を軽蔑し、窓から投げ捨てたりもすることもある。
  ジプシーは、我々にはとても無秩序で統制が取れていないように
  見える。我々の契約や約束、同意による社会システムに比べると、
  彼らは時に信用しにくい場合がある。
  しかし、それは彼らの価値観のシステムが違うからに過ぎないんだ。
Q:この作品であなたが最も伝えたかったことは何ですか。
A:社会的に言えば、人類の豊かさとは様々な異なる文化の存在にある
  ということ。
  それは守られるべきである、ということ。
  しかもそれは、文化間の対話によってこそ保護されることが可能
  だということ。
  エモーショナルに言えば、
  人生とは、1曲の長い歌のようなものかもしれない、ということ。

ラルフ・マルシャレック(映画『炎のジプシー・ブラス』監督)への
インタビューより
インタビュアー:川島恵子( 株式会社プランクトン
                           http://www.plankton.co.jp/ )


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映画『炎のジプシー・ブラス』について

昨年「タラフ・ドゥ・ハイドゥークス 東欧吹奏楽団」の関連企画
として映画『ラッチョ・ドローム』を上映しご好評をいただきました
ので、調子に乗ってお届けするジプシー・ミュージック+映画の
リミックス第2弾!
今回は8月27日(金)の「ファンファーレ・チォカリーア 東欧吹奏
楽団」と、ファンファーレ・チォカリーアのドキュメンタリー映画
『炎のジプシー・ブラス〜地図にない村から』の組み合わせです。

6月12日に上映される『炎のジプシー・ブラス〜地図にない村から』
ですが、この映画の上映を組み合わせることができたのは
いくつかの点でラッキーでした。
この映画、「ファンファーレ・チォカリーア」の来日に併せて
この夏に劇場公開されるのですが(東京で単館上映の予定)、
水戸芸術館での上映が正真正銘の劇場におけるプレミア上映となる
のです(山形国際ドキュメンタリー映画祭での特別上映はありました
が)。つまり、この上映にいらっしゃった方は、日本で最初に
この映画を観る観客となられるというわけです。さらに、通常封切り
映画の劇場一般料金は1,800円ですが、今回は特価1,000円でお届け
します!ファンファーレ・チォカリーアのチケットとセット購入
すれば、さらに200円引きの800円です!

さて肝心の映画なのですが、「どうなの?」と
二の足を踏まれている方もいらっしゃるでしょう。
昨年の、ロマ民族の長い放浪の旅を音楽で綴った感動的な『ラッチョ
・ドローム』に対し、ファンファーレ・チォカリーアという
単体のグループにスポットを当てたドキュメンタリーということで、
フィールドワークの報告みたいな渋い内容を想像されているかも
しれません。しかしこの映画、はっきり言っておもしろいです。
どこからどこまでがドキュメンタリーでドラマなのか、けっこう
突っ込みたくなるところが頻発します。たとえば冒頭、ゼチェ・
プレジーニ村(ファンファーレ・チォカリーアの故郷)の湖から
少年がホルンを拾い上げるところから映画は始まります。そのホルン
を少年が村一番の楽器修理屋のところに持っていって直してもらう、
というサイドストーリーがチォカリーア本体の話にはさまれていくの
ですが、「これはヤラセだろ!」と誰もが思うでしょう。だいたい
ホルンがそう簡単に湖に落ちているものでしょうか。しかし、これは
たしかに完全なフィクションなのですが、壊れた楽器は湖に捨てられ
ることがしばしばで、実際にこうしたことはあるそうです。
さらに少年も村の実在の少年、ゴゴイという修理工も村で実際に活躍
している人、ということで、いわば当人たちによる再現フィルム、
みたいなことをしているわけですね。

本体のドキュメンタリーの方ですが、これは彼らを「発見」した
ドイツ人音楽家(のちにチォカリーアのプロデューサーとなる)と
チォカリーアとの出会い、そして彼らの世界ツアーの成功までが
描かれています。これらはすべて現実にあったことの記録だそうです。
とはいえカメラを向けられているチォカリーアの面々は、自分たちに
求められるイメージを嬉々として演じるふしもあり、
ひと筋縄ではいきません。
そうして翻弄されているうちに、彼らの熱狂的な演奏ぶりに、
いつしかどこまでが虚でどこまでが実なのか、
そんなことはどうでもよくなってしまうことでしょう。
あえていえば、虚も実もすべて呑み込んでしまう彼らロマたちの
たくましい生き方の真実が、そこに投影されているとでも
言えましょうか。

それにしても彼らの演奏は終始圧巻の一言につきますし、
聴衆の興奮ぶりもすごいです。これを観るだけでも、
彼らの生演奏への期待は否が応でもつのるというものでしょう。
後半のクライマックスとして初来日公演の模様が移されるのですが、
街頭ライヴを規制されたりするシーンもあり、
日本ってやっぱり寛容さに欠ける奇妙な国なのかなあ、と
ちょっと悲しい気持ちになります。
とはいえ、日本公演のライヴ演奏のシーンがとにかく一番
盛り上がっているので、よしとしましょう。

ちなみにおまけ情報ですが、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスが
ちょっぴり出てきます。サックスの梅津和時さんも映ります。
ぜひ見つけてください。
というわけでどうぞこの上映機会をお見逃しなく!
そして観てしまったら、必ずや本編の演奏も聴きたくなること、
うけあいですよ。

最後に、監督のラルフ・マルシャレックへ、配給元プランクトンの
川島恵子さんが行なったインタビューを、冒頭に掲載させていただき
ました。快く転載をご許可くださった同社に感謝いたします。
また、今回の上映は、NPO法人シネマパンチとの共催により実現
したものです。「水戸映画祭」や「水戸短編映像祭」で意欲的な
活動を繰り広げるシネマパンチと歩みを共にできることは、
心強い限りです。この場を借りて、感謝申し上げます。

矢澤孝樹(水戸芸術館音楽部門主任学芸員)

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『炎のジプシー・ブラス〜地図にない村から』
ファンファーレ・チォカリーア  東欧吹奏楽団
詳しい情報は下記にございます。
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1700/1776.html

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