これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date: Thu, 17 Mar 2005 21:04:43 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,01928] "Pieter Wispelwey in Tokyo" reported by Tetsuya Sekine
To: atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id: <49256FC7.00425A26.00@david.arttowermito.or.jp>
X-Mail-Count: 01928

▼水戸芸術館ATM速報2005年3月17日発------------------

今週土曜日(3月19日)に水戸芸術館にやってくる
ピーター・ウィスペルウェイ。
首を長くしてその日を待っていらっしゃるお客様も多いかと存じます
が、担当者は一足早く東京公演(3/15 浜離宮朝日ホール)にお邪魔
してきました。プログラムは、デヤン・ラツィック(ピアノ)との
デュオで、オール・ブラームス。実に渋いです。

1曲目は、チェロ・ソナタ ニ長調。
「ん?」と思われた方、鋭いですね!
実はこの曲、<雨の歌>と呼ばれるヴァイオリン・ソナタ第1番を
ブラームス自身が編曲したものなのです。
ウィスペルウェイはこの曲について「信じがたい音楽、信じがたい
インスピレーション・・・」と述べていますが、作曲者の霊感は当夜
演奏するウィスペルウェイに舞い降りたようでした。
驚くほど自由に呼吸する音楽であり、演奏です。
聴く側は、ウィスペルウェイの存在を通り越して、
作曲されたばかりのブラームスの音楽に接しているような
新鮮な感動に浸るばかりでした。

2曲目は、チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 作品99。
ご承知のように<第2番>は、<第1番>とは対照的に情熱的で
高揚感みなぎる作品ですが、ウィスペルウェイとラツィックの演奏の
何とダイナミックだったこと!
あるときはチェロ独奏とオーケストラのための協奏曲のように、
またあるときはピアノ独奏とオーケストラのための協奏曲のように、
室内楽の枠を超えた音の洪水、音楽の奔流が客席に押し寄せてきます。
まだ20代のラツィック(1977年生まれ)が、
ウィスペルウェイ(1962年生まれ)に一歩も引かず、
がっぷり四つでわたり合う姿も印象に残りました。

3曲目は、チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 作品38。
これは水戸芸術館でも演奏される作品ですから、詳細なコメントは
差し控えます。だた一つだけ、孤独感や寂寥感といった形容で
しばしば語られるこのソナタが、一夜のリサイタルをまとめるに
ふさわしい力強さや充実感をも備えた作品であることを、
あらためて気づかせてくれるウィスペルウェイの演奏だったことは
ご報告しておきましょう。

ウィスペルウェイが今回日本に携えて来た楽器は、
イタリアの名工グァダニーニが1760年に製作したもの。
昨年、奇跡的に良い保存状態で発見され、クリスティーズ・
オークションでグァダニーニ製としては過去最高額で落札した
「運命的な出会いの楽器」(ウィスペルウェイ談)です。
ウィスペルウェイは、「古楽器も現代楽器も両方操れるチェリスト」
というレッテルが貼られていますし、私も vivo 等でその視点から
ウィスペルウェイを語ってきました。しかし、今回、グァダニーニを
手にしたウィスペルウェイの演奏を聴いて、もう古楽器に戻ることは
ないかも知れない、とも思いました。
音色が飛び抜けて艶やかで薫り高いのに加え、ウィスペルウェイが
古楽器に求めるノン・ヴィブラートのフレージングと音色の豊かさを
も、グァダニーニという名器を用いて表現し得ているのです。
ラトルやミンコフスキやハーディングといった今をときめく指揮者
たちが、現代楽器のオーケストラを率いつつ古楽奏法を適宜取り入れ
てめざしている21世紀的演奏とでも言うべきものを、
ウィスペルウェイのチェロはすでに高い次元で実現させてしまったと
言ったら言い過ぎでしょうか?

まぁ、そういった空想の類いはこの辺で止め。
とにかく、ウィスペルウェイの弾くグァダニーニが最高の音色で
聴く者を陶酔させることだけはお約束します。
ブラームスのみならず、バッハ(無伴奏の第2番)、ベートーヴェン
(ソナタ第3番)が入った水戸芸術館独自プログラムは、
聴き応え十分でしょう。
アンコールも、気の利いたものをやってくれるはず。
最新CD「ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集」
(ピアノ:ラツィック)の販売もありますし、サイン会も・・・。
ぜひご期待ください!

関根哲也(水戸芸術館音楽部門学芸員)

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ピーター・ウィスペルウェイ チェロ・リサイタル
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http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1800/1896.html
ピアノ:デヤン・ラツィック Piano: Dejan Lazic
2005年3月19日(土)18:00開場・18:30開演
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 BWV1008
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第3番 イ長調 作品69
ブラームス:チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 作品38
料金(全席指定):A席3,500円 B席2,500円
チケットは下記でお取り扱いいたしております。
・館エントランスホールチケットカウンター(9:30〜18:00、月曜休)
・館チケット予約センター Tel. 029-231-8000(9:30〜18:00、月曜休)
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