これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date:  Tue, 9 Sep 1997 22:46:52 +0900 (JST)
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▼ATM速報1997年9月9日発−−−−−−−−−−−−−−−

特別展「新宿区北新宿4-3-3 原方二階 笹目浩之」

寺山修司ほど、演劇が何によって形づくっているかを一つひとつ厳密
に明らかにし、それらの要素がいかに自立した表現力をもっているか
を示しつづけた演劇人はいません。彼の舞台作品のポスター、オブジ
ェのもつ説得的な魅力は、そのことを饒舌に語っています。
寺山修司の世界に魅了された人たちが<いま>彼と出会うには、彼の
舞台を観る、彼の作品を読む、彼の舞台作品のポスターを見る、そし
て彼の舞台を造形した装置・オブジェと向かい合うことから始めるほ
かにありません。そのとき、私たちは、83年から現在まで、そうし
た出会いを旺盛に、しかも真摯に試みてきた一人の青年と出会うこと
になります。その青年の名前は、笹目浩之……。

<解散した1983年から現在まで、「寺山修司と天井桟敷」を演じ
ているのが笹目浩之なのよ。>(九條今日子)
 
今回の展覧会は、現在の日本の現代美術の病である客観性を否定する
ことから始まります。
 
架空の固有名詞としてのポスターコレクター「笹目浩之」の主観、笹
目という「目」を通し、一人の青年の熱き身体性のなかにポスターと
いうメディアがつくり上げる幻想とパースペクティヴによって生じた
夢想がオブジェを重くするかのごとく集めた数万点のコレクション。
その数奇なコレクションの過程と、「ポスター貼り」という職業をも
ったために経験したさまざまな偶然性の出会いのなかで、彼が体験し
た80年代のなかの<60年代>、90年代のなかの<60年代>。
そして、20年近くかかって彼が追体験した幻想の<60年代>の演
劇……。
それらは一体何であったのか。そこから浮かび上がってくるものは、
寺山修司と天井桟敷なのかも知れない、あるいはその周辺の<60年
代>の演劇状況なのかも知れない……。
この展覧会は、観客が笹目浩之になって二重の追体験をしながら、観
客自身の<60年代>を探す試みです。

今回、<60年代>を語るために登場してもらった「笹目浩之」は、
寺山修司の演劇によって、自己のアイデンティティが目覚めたにもか
かわらず、実体としての寺山修司と対話することもなく、寺山修司と
関係のあった人々との交流によって、寺山修司とその周辺の<60年
代>を想像の世界で、仮の体験として形づくっていきます。それはバ
ーチャルリアリティとしての<60年代>といっていいでしょう。
そして寺山という「主人の不在を満たす不在の在り方」に、「笹目浩
之」は現存する自分自身のアイデンティティをぶつけてゆきます。
「笹目浩之」のなかで無限に広がってゆく世界が、寺山修司という一
つの触媒を通じて垣間みる幻想の<60年代>。導かれるままに「笹
目浩之」は見たこともない<60年代>を夢想します。
いま、「新宿区北新宿4-3-3 原方二階 笹目浩之」という、限り
なく固有名詞に近い普通名詞が、寺山修司を、そして寺山修司を取り
巻いていた<60年代>の演劇や美術を私たちの前に現出させます。
これは単なる展覧会ではなく、無名性の彼方から、個人の自己主張に
帰結する美術展なのです。

【会場構成】(プランニング・小竹信節)

展示会場の入り口には、架空の固有名詞「笹目浩之」の上京して最初
の下宿である1981年の(4帖半賄い付きの18歳の浪人生活がに
じんでいる本当に汚い部屋、足の踏み場のない、しかも窓の外には一
日中雨が降っている)新宿区北新宿4-3-3-3-3 原方二階が出現
しています。
観客は、その畳の部屋の押入れ上段の笹目浩之の寝ている万年床式ベ
ットの湿った煎餅布団を土足で踏み越えなければ展示を見ることはで
きません。
この部屋から笹目浩之という存在、寺山修司と天井桟敷、また幻想の
<60年代>が始まってゆきます。これは一種の踏み絵であり、これ
を観客は必ず踏み越える必要があります。
なぜか、押入れの上段の奥の壁が半分剥がされています。
剥がされた壁の向こうには、整然としたポスターの展示が見えます。
観客は土足で彼のコレクションに踏み込まなければなりません。
実際、展示期間中、何日かはその部屋に本人が生活し、友人が遊びに
来たりしています。もしかしたら、宴会までしているかも知れません。
 観客は、
 宴会に参加するのか……。
 そこを踏み越えるのか……。
 呆れて帰るのか……。

なおギャラリーのエントランスでは「映像で見る60年代」と題する
ニュース映像を、回廊では「60年代をめぐって」と題するビデオイ
ンタビューを、それぞれ放映しています。

開催期間   10月10日(金曜日)〜11月23日(日曜日)
開館時間   午前9時30分〜午後6時30分(入場は午後6時まで)
休館日    毎週月曜日(ただし、11月3日は開館、11月4日休館)
会場     水戸芸術館現代美術ギャラリー
チケット   一般 800円 前売り及び団体(20名以上) 600円
        *中学生以下・65歳以上、心身障害者の方は入場無料
チケット取り扱い 水戸芸術館エントランスホール内チケットカウンター
         チケットセゾン               03-3250-9999
お問い合わせ   水戸芸術館ACM劇場   029-227-8123

−−−次回配信をお楽しみに! −−−−−−−−−−−−−−−−−