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Date: Sun, 19 Oct 1997 22:08:03 +0900 (JST)
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▼ATM速報1997年10月19日発−−−−−−−−−−−−−−−
優れた芸術評論に与えられる、第7回吉田秀和賞の受賞作品が決まりまし
たのでお知らせします。
伊 東 信 宏
『 バ ル ト ー ク 〜民謡を「発見」した辺境の作曲家〜 』
(中公新書 1997年7月刊)
バルトークの民俗音楽研究の実態を解明した意欲作である。バルトーク
が各地をめぐってどういう音楽を聞き、どういう採譜を行い、それについ
て何を考えたかを具体的なデータを積み重ねながら紹介しているが、その
手続きには好感がもてる。
その研究が、彼の出身地である中欧の小国ハンガリーに根差し、そのな
かで戦いぬいた歴史的社会的環境から生まれたものであり、19世紀まで
のヨーロッパ音楽の「伝統」と対決せざるをえなかったのだ、というのが
著者の基本的な考えのようだが、「ハンガリー音楽=ジプシー音楽」とい
う通念を、リスト、ラヴェルの音楽手法との比較で検討した箇所や、ある
いは晩年のバルトークの創作が民俗音楽の影響の深化した形であるという
指摘などが、特に目をひく。意外な角度から20世紀音楽史の一面を照ら
し出してもいる。小冊子ながら、内容の富裕な好著といえよう。
伊東信宏(いとう・のぶひろ)
1960年9月6日、京都府生まれ。大阪大学文学部卒業。大阪大学大学
院博士課程単位取得退学。ハンガリー科学アカデミー音楽学研究所、リス
ト音楽院に留学。現在、大阪教育大学助教授。
1990年に論文「ワールドミュージックの可能性」でアリオン賞音楽評
論部門奨励賞受賞。著書(分担執筆)に、『小さな音風景』(時事通信社)、
『環境と音楽』(東京書籍)、訳書に、『ハンガリー民謡』(バルトーク著
間宮芳生と共訳 全音楽譜)、『バルトークの室内楽曲』(カールパーティ
著 江原望と共訳 法政大学出版局より1997年12月刊行予定)がある。
−−−次回配信をお楽しみに! −−−−−−−−−−−−−−−−−−−