これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date: Thu, 2 Feb 2006 14:23:48 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,02068] Detailed information on "KAMOME"
To: atm-info@arttowermito.or.jp
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▼水戸芸術館ＡＴＭ速報２００６年２月２日発------------------

シリーズ・すべてはシェイクスピアから 2 『かもめ』、
いよいよ公演も残すところあと 3回となりました。

これまでのイメージを超える新たな『かもめ』が出来上がりました。
ご覧いただいた方も、これからご覧になる方も、もしくは
「『かもめ』、どうなのかな？」と思っている方にも、
その魅力について、ちょっとでもお伝えできたらと思います。
また、水戸芸術館のホームページに舞台写真をアップいたしました。
こちらもご覧いただいて、イメージを膨らませていただけたらなと
思います。
http://www.arttowermito.or.jp/kamome/kamomej.html

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喜劇？ 悲劇？
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作家を夢見る青年コンスタンティン、
その恋人で女優を夢見るニーナ、
コンスタンティンの母親で女優のアルカージナ、
その愛人の作家トリゴーリン。
この 4人の関係を縦軸に、様々な人間関係が織り成されていきます。
チェーホフはこの作品を喜劇だと言っています。
結末が結末だけに「どこが喜劇？」と思いがちなのですが、
やはり喜劇なんですね。
この物語に出てくる人たちは、人の話をさえぎったり、
わがままだったり、唐突に怒ってみたり、理屈を捏ね回してみたり
と、本当にやりたい放題。「何なんだ、この人たちは？」と
思われても無理はないかもしれません。
でもちょっと考えてみてください。
ひょっとしてこの人たち、どこかで見たことのある人だったり、
自分自身が同じような態度をとっていたとか、
部分部分で思い当たる節はありませんか？
そう、まるでチェーホフは昆虫観察でもするかのように
人間を観察しているんじゃないか、しかも笑いながら。
そんなことを考えながら観てみると・・・
やっぱり喜劇なんだなと思えるのです。

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ヒマワリ
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今回、劇場に入ってまず目に飛び込んでくるのは、ヒマワリ。
『かもめ』でヒマワリ。
かなり珍しいというか、たぶんそんな『かもめ』はなかったのでは
ないでしょうか。これは演出家の桐山知也によると、
「明確な理由はないけれど、そんなイメージがふっと沸いたから」
とのことです（とはいっても、ヒマワリはロシアの国花でもあります。
知ってました？）。登場人物たちの心の揺れみたいなものが表現でき
るんじゃないかと思ったそうで、ラストシーンでは意表をついた形で
ヒマワリが使われています。
そう、まさにある誰かの心情をヒマワリが語るのです。

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俳優たちの魅力
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そして、何と言っても俳優の魅力です。
周囲の人間をあっという間に巻き込んでしまう
大女優の風格たっぷりの吉野佳子。
ダーティな部分だけでなく作家の抱える苦悩も見事に表現する
辰巳蒼生。考えてみたらけっして "いい人" な役ではないのに
憎めないのは、本人の魅力によるものに違いありません。
純粋で無垢な少女が女優として歩みだすその成長を見事に演じる
中村美貴。
ダンスにも取り組んでいるだけあり、ナイーブかつ "動く"
コンスタンティンを熱演する池田遼。
台詞を一言発するだけでその場に激しくドラマを展開させてしまう
松浦佐知子。
役の持つイメージをその飄々としたキャラクターで軽々と超え、
完全に自分のものにしてしまった冨岡弘。
設定年齢が20歳上だってなんのその、お馴染みACMの名取哲。
俳優それぞれの個性が激しくぶつかり合う、そんな『かもめ』に
仕上がりました。

この『かもめ』は水戸でしか観ることができません。
公演終了まであとわずか。どうかお見逃しなきよう。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。

辻本 力（水戸芸術館演劇部門学芸員）

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