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Date: Wed, 10 May 2006 14:04:49 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,02106] Special information on Andreas Staier Fortepiano Recital
To: atm-info@arttowermito.or.jp
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▼水戸芸術館ATM速報2006年5月10日発----------------
皆様、いよいよ 5月12日(金)の「アンドレアス・シュタイアー
フォルテピアノ・リサイタル」が近づいてまいりました。
シュタイアーはすでに来日し、『ラ・フォル・ジュルネ音楽祭』に
出演したりトッパンホールでリサイタルを行ったりしていますが、
12日のリサイタル・プログラムは水戸芸術館のみの完全オリジナル・
プログラムです。今日は公演に先立ち、ATM速報を受信されている
皆様にこっそり、vivoに書ききれなかったプログラムの聴きどころを
お話したいと思います。
その前に、昨日トッパンホールで行われたシュタイアーの演奏会に
行ってまいりましたので、レポートさせていただこうと思います。
シュタイアーはトッパンホールで 2度の演奏会を行いますが、
ひとつは協奏曲プログラム、ひとつはソロ・リサイタル(オール・
モーツァルト・プログラム)。私が行ったのは協奏曲プログラムで、
共演はミト・デラルコの第一ヴァイオリン奏者でもある寺神戸 亮
率いる彼のオーケストラ「レ・ボレアード」。曲目は、ハイドンの
ピアノ協奏曲ニ長調 Hob.XVIII-11、モーツァルトのピアノ協奏曲
第9番変ホ長調 K271<ジュノム>、その間にオーケストラのみで
モーツァルトの交響曲第33番変ホ長調 K319。
私は前から 3列目の右側という場所で、シュタイアーの指は
もちろん見えないものの、彼の動きや表情の変化、息遣いまでが
感じられるような近さで、すっかりシュタイアーの至芸を堪能させて
もらいました。
4-4-2-2-1 という小編成のオーケストラの前に置かれたのは、
濃い目の茶色が照明に美しく映えるクリストファー・クラーク作の
フォルテピアノ。
数年前に急逝されたフォルテピアノ奏者の小島芳子さんが愛用されて
いた名器で、2002年のミト・デラルコ第5回演奏会で小島さんを
ゲストにお迎えしたときに彼女が携えてきた楽器です。
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1400/1409.html
さらに12年前、ジョス・ファン・インマゼールのフォルテピアノ・
リサイタルのときも前半用いられた楽器というわけで、水戸芸術館に
は不思議と縁の深い楽器です。
タッチの繊細さ、ピアノとフォルテのダイナミックな対比、
そして色彩豊かな残響・・・すばらしい楽器です。
最初「音量が小さいな」と思われるかもしれませんが、耳が慣れると
出会ったことのないような響きの花園が眼前に開けてきます。
さて、シュタイアーのソロですが、いやこれが自由自在としか
言いようがない。もともと集中力の高さにおいて特筆すべき人では
ありましたが、ずっと音楽が自由に、開放的になったという気が
します。すでに近作モーツァルトのCDでそれを強く感じましたが、
いったいこの数年に彼の人生に何があったのでしょう?と思わせる
ほどの明るさと力強さ。さらに、フレーズひとつひとつの弾き方に
しても、以前は息詰まるほど厳格だったのが、崩したり、即興を
たくさん盛り込んだり(これがすごい)、音楽を楽しんでいるのが
ひしひしと伝わってきます。オーケストラもシュタイアーの奔放さに、
みごとに反応していました。
しかし、アンコールで演奏されたハイドンのピアノ協奏曲の第3楽章
の再演は、えらいことになりました。ただ弾くだけでは終わらない
だろうと思いましたが、音楽の流れをとめるほどの急ブレーキが
かかったり、不協和音の連打をありえないクラスター状態で弾いたり、
オケのメンバーは目を白黒、聴衆は大喝采。
終演後に寺神戸氏と話したとき、
「あそこまでやるとは思わなかった・・・」と絶句していたのが
印象的でした。
やはり、CDの<トルコ行進曲>で聴かせた大暴れは、今の彼の素直な
「気分」なのでしょうね。また、来場していたシュタイアーと親しい
日本のフォルテピアノ奏者の方は、「彼は最近作曲もやっているので、
そのあたりが反映しているのかもしれませんね」とおっしゃって
いました。なるほど。作曲によって楽譜を読む行為が、より自由に
なった、ということもあるのでしょうね。やりたい放題やっても
音楽の品格がまったく崩れないのは、ただの思いつきではなくて、
鋭利に楽譜を読んだ上での「確信犯」だからに違いありません。
ブラヴォが飛び交う興奮の中、シュタイアーは再度現れてハイドンの
ソナタの楽章を弾きました。どの曲だったかはわからなかったのです
が、たちまちのうちに深い憂愁で会場を包んでしまい、彼の音楽の
深さと幅広さを見せつけました。
シュタイアーのステージ所作は繊細で、長身を折り曲げて
聴衆にお辞儀をする姿は、10代の青年のような含羞が感じられ、
なんとも心引かれるものがあります。
しかしその内なる炎は、鍵盤にむかうと青白く燃え上がり、
聴くものにその「覚醒した熱さ」を伝播してゆくのです。
終演後、優しい笑顔とささやくような声で
「また水戸で弾けるのが嬉しい」と言い残し
楽屋に消えていったシュタイアー。
来日中の能の鑑賞を楽しみにしているというシュタイアー。
その繊細な魂が、私たちと共振するのもまもなくです!
あっ、これで終わってはいけませんね。
プログラムですが、解説を書きながら、
「ああ、これはストーリーがあるな」と思いました。
ダンテの『神曲』のような、地獄から天国への
魂の道行きが隠されているように思えます。
これは、非常にドラマティックなプログラムです。
シュタイアーの、ダークな部分と明るい部分の、
双方がせめぎあうプログラムです。
最初のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハのファンタジアで、
まず度肝を抜かれることでしょう。
これはほんとうに18世紀の音楽なのだろうか?と思われること
まちがいなし。
そして最後のモーツァルト<グラスハーモニカのためのアダージョ>。
グラスハーモニカのあの響きをフォルテピアノでどう出すんだろう、
と思っていたのですが、前述のフォルテピアノ奏者の方が、
教えてくれました。
「きっと○○○○○○を使いますよ。
そうするともうほんとうに素敵な、
★★★な響きがするんですから・・・」
ごめんなさい、これはナイショです。聴かなかったことにして、
フォルテピアノの驚くべき響きの世界を満喫してください。
そうそう、もちろんあの<トルコ行進曲>がいったいどんなことに
なるか、これも期待はつきませんね。
それにハイドン。<アンダンテと変奏曲>は、ハイドンってこんなに
深いんだ!と驚くこと間違いなし。そして変ホ長調のソナタは、
最高に機知に富んで、かつダイナミックな傑作です。
当日のプログラムには楽器解説やシュタイアーへの Eメール・
インタビューを載せました。
終演後は、サイン会も予定しています。
チケットは残り少なくなってきました。
迷われている方、ぜひ、この一期一会の(ついこのフレーズ使って
しまいますが、このプログラム世界で水戸だけなので、
誇張はありません)演奏会においでください。
満場の聴衆で、喝采と共にアンドレアス・シュタイアーを迎えよう
ではありませんか!
矢澤 孝樹(水戸芸術館音楽部門主任学芸員)
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アンドレアス・シュタイアー
フォルテピアノ・リサイタル
モーツァルトに贈る音楽の花束 --2
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2006年 5月12日(金)19:00開演(18:30開場)
水戸芸術館コンサートホールATM
料金(全席指定):A席3,500円・B席2,500円
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/2000/2076.html
・館エントランスホールチケットカウンター(9:30〜18:00)
・館チケット予約センター Tel. 029-231-8000(9:30〜18:00)
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明日18時または完売まで、24時間、ご予約いただけます。
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