これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date: Sat, 22 Jul 2006 19:39:33 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,02134] "LIFE" Opening Lecture Video file / Screening of "Hotel Rwanda"
To: atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id: <492571B3.003A8DBF.00@david.arttowermito.or.jp>
X-Mail-Count: 02134

▼水戸芸術館ATM速報2006年7月22日発 -----------------

「ライフ」展、お待たせいたしました、本日始まりました。
http://www.arttowermito.or.jp/life/lifej.html

脳科学者・茂木健一郎氏によるオープニングレクチャーの
ビデオファイルを下記に置きました。
http://www.arttowermito.or.jp/live/20060722.ram

*日本語トップページ「レクチャー・トーク等のビデオファイル
  全リスト」メニューからもお選びいただけます。
*Podcast ファイルは明日のダンスパフォーマンスと一緒に後日
 追加いたします。もう少々お待ちください。

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明日 7月23日(日)は、12時〜と13時〜の 2回、パイプオルガン
プロムナードコンサートをエントランスホールで(無料)、続く
14時から、ギャラリーでは「ライフ」展関連ダンスパフォーマンス、
そして、15時からはACM劇場にて茨城初公開の『ホテル・ルワンダ』
の上映と、ぜひご覧いただきたいスペシャルな催しが続きます。
明日のお誘いあわせでのご来館、お待ち申し上げております。

『ホテル・ルワンダ』とコノノNo.1につきましては下記をどうぞ。
http://www.arttowermito.or.jp/2006/ongaku/konono1j.html

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コノノ通信Vol.3 映画『ホテル・ルワンダ』について
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ここ数年、水戸芸術館音楽部門では、ワールド・ミュージック系の
演奏会を行う際、関連企画として映画上映を実施しています。

2003年のタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの際には、ロマ族の出自と
彷徨を彼らの音楽(タラフも出演)と共につづる感動の『ラッチョ・
ドローム』。
2004年のファンファーレ・チォカリーアの時には、このパワフルな
吹奏楽団のタフ・ライフと世界制覇を描いた痛快なドキュメンタリー
『炎のジプシー・ブラス』を。
2005年のクリスティーナ・ブランコに関しては、同郷の世界的巨匠
マノエル・デ・オリヴェイラ監督の衝撃作『永遠の語らい』を。

これは、私たちの日常に比較的なじみのない地域の音楽を体験するに
あたり、その国の文化や社会をより深く知るきっかけとなることを
願ってのものです。映像表現である映画は、視覚のみならずその場所
の「空気」まで伝えてくれるという点で、格好のメディアでしょう。
もちろん、音楽のみならずすばらしい映画を楽しんでいただきたい、
という思いもそこにはあります。
今回も含め、いずれの関連企画も、「水戸短編映像祭」などを実施し
ている気鋭の NPO法人、「シネマパンチ」と共催しています。

さて、コノノNo.1の関連企画としてこの度皆様にお届けするのは、
テリー・ジョージ監督が2004年に撮った映画『ホテル・ルワンダ』。
同年の米アカデミー賞で主要三部門(主演男優賞、助演女優賞、脚本
賞)にノミネートされた力作です。惜しくも受賞は逃がしましたが、
その年アカデミーの主要賞を独占したのがクリント・イーストウッド
監督の凄すぎる傑作『ミリオンダラー・ベイビー』であり、対抗馬は
マーティン・スコセッシ監督の『アビエイター』なのですから、
大健闘と言うべきでしょう。しかしこの映画は、そのテーマゆえに、
日本での公開が遅れ、5,000人もの署名活動の末にやっと今年初頭に
劇場公開されました。ちなみに、茨城での劇場公開はこれが初めて
です(さらに、いささかの宣伝をこめて申し上げますが、上述の関連
企画で上映した映画はどれも茨城初公開)。

日本で公開がかくも遅れた理由はなんでしょう。それは、この映画が
私たちにつきつけるテーマと、密接に関係しています。
以下、この映画を鑑賞していただくための手がかりとして、
その背景を記すことにしましょう。
ネタバレはいっさいありませんので、映画を観る前に読まれても
大丈夫です。

映画の舞台となるのは、アフリカ中央部、やや東南よりの内陸国、
ルワンダ(RWANDA)です。大きな国ではなく、面積を日本の国土に
たとえるならば中国地方の約83%に当たります。人口は約775万人
(1990年代半ば)。東京都の約 2/3 というところでしょうか。

この国で、1994年、民族紛争を火種に、犠牲者100万人といわれる、
想像を絶する虐殺が行われました。100万人といえば、
水戸市の 4個分。それだけの人々が、わずか三ヶ月ほどの間に、
銃や鉈でその存在をこの世から抹消させられたのです。
虐殺したのはルワンダ内の多数派民族、フツ族。虐殺されたのは、
少数派のツチ族。では単純に、フツ族が「悪い」のでしょうか。
もちろん、これほど多くの人々を殺した罪は永遠に消し去ることが
できませんが、背景には、アフリカ国家の多くがいまだに苦しんで
いる植民地時代の負の遺産が、影を落としています。

アフリカの地図をご覧いただくと、いささか不自然な、まるで定規で
引いたようにまっすぐな「国境」が、あちこちに引かれていることに
気づかれると思います。これはかつて欧米諸国が、アフリカの諸地域
を、現地の人々の意志などおかまいなしに、まるでピザでも切り分け
るように分割して支配した、その名残にほかなりません。
ルワンダも、この支配に苦しんだ国のひとつでした。「国境」こそ
見た目は普通ですが、その中では、支配者ベルギーによって深刻な
「分裂と支配」の政策が進められていました。

ベルギーは、少数派であるツチ族を、ヨーロッパ人に風貌が似ている
ことを理由に優遇し、多数派フツ族を徹底して差別する政策をとった
のです(この「風貌」による差別がいかにナンセンスなものかは、
映画の中で象徴的なシーンが出てきますので、どうぞお見逃しなく)。
この差別政策はルワンダ人の意識に深く浸透し、1962年に独立して
からも両民族間の軋轢は解消されることなく、重苦しい対立が続き
ました。

はじめは多数派フツ族が政権を握っていたのですが、それは1973年の
軍事クーデターによっていっそう独裁的な体制へと強化されました。
これに対しツチ族は愛国戦線を結成、1990年には内乱が勃発します。
92年になってフツ族の大統領は和平へ向けて動き、やっと両民族の
融和が達成されるかと思った矢先、94年に大統領の乗った飛行機が
撃墜されてしまいます。
これをツチ族ら愛国戦線の仕業、と決めつけたフツ原理主義者は、
民兵を駆り出し、ラジオ放送でツチ殲滅をあおりたて、大虐殺の幕が
切って落とされるのです。

映画は、ルワンダの首都キガリの最高級ホテル「ミル・コリン」の
支配人、ポール・ルセサバギナを主人公としています。
大虐殺の勃発を知った彼(穏健派のフツ族)は、はじめツチ族の妻を
はじめ家族を守ることに心を砕きますが、やがて拡大する暴虐を目の
当たりにし、自らの勤める「ミル・コリン」を砦に、逃げのびてきた
ツチ族の人々を守ることを決心します。国連維持軍もいる、欧米の
マスコミもいる、このような非道を目の当たりにすれば、欧米諸国が
きっと助けに来てくれる、という希望を胸に。

しかし事態はまるで逆の方向に進みます。国連維持軍は撤退を始め、
欧米諸国は見て見ぬふりをしている。いったい何故?
絶望的な状況の中で、ポールは家族を含む 1,200人の人々を守り抜く
ことができるのでしょうか?
なぜ欧米諸国が助けにこないのか、そしてポールの命がけの闘いの
結末は。それは、ここでくだくだしく書くことなく、なによりまず
映画を観ていただくことにいたしましょう。ちなみにこの映画は、
実話に基づいています。そして、日本での公開が遅れたことはなぜか、
という冒頭の問いに対する答えも、まさにこの映画の中にあります。

そう、私たちは1994年当時、この事件についてどの程度知っていた
でしょうか?

あとは、映画に関する情報をいくつか。
主演のドン・チードルは、スティーヴン・ソダーバーグ監督の力作
『トラフィック』や、『オーシャンズ11』『オーシャンズ12』などで
印象的な演技を見せてくれる実力派です。特に『トラフィック』での、
麻薬王の巣窟に命がけで盗聴器を取りつける男の役は、鮮烈に記憶に
残っています。この映画でも、妻役のソフィー・オコネドーともども、
このような不条理な災厄に放り込まれた市井の人間が必死で闘う様を、
迫真的に演じています。
そのほか、ニック・ノルティやホアキン・フェニックス、そして
ジャン・レノと、個性派俳優が脇を固めています。ふだん私たちが
目にすることのないアフリカ国家の首都の人々の暮らしが活写されて
いるのも見逃せませんし、現地の音楽も数多く用いられ、災厄に蹂躙
されても力強く受け継がれる文化の一端を、垣間見せてくれます。

これまでの関連企画で上映された映画の中でも、もっとも「王道」な
作りのこの映画、事実の重みと、悲劇の中でも尊厳を守ろうとする
人間の英雄的な努力を、息詰るような迫力の 2時間を通じて
体験させてくれます。
映画としても非常に力のこもった、手に汗握る「必見」の一本だと
申せましょう。

ではなぜ、この映画をコノノNo.1の関連企画として選んだか。
虐殺が鎮まり、愛国戦線主導で統一新政府が樹立されたのち、戦犯は
裁きにかけられましたが、多くの虐殺者たちは国外に逃亡しました。
その主要な逃亡先は、コンゴ民主共和国(当時の国名はザイール)、
すなわちコノノNo.1の国だったのです。
つまり、これは、コノノNo.1の母国にとっても、決して「対岸の火事」
ではありませんでした。

ルワンダの事件は、アフリカで起きた悲劇の中でも、
規模として最大級のものでしょう。しかし、これに類することは
数限りなく起こっています。悲惨な飢餓をもたらしたビアフラ内戦、
南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)、等々・・・。
コノノNo.1の住むコンゴも、例外ではありませんでした。
彼らの力強い音楽が、どのような厳しい現実と闘う中で生まれてきた
ものか、それを知るためのひとつの手がかりとして、この映画を
私たちは選びました。ぜひ、ご覧いただければと思います。当日、
私は最初に出てきて少しだけお話させていただきますが、
どうぞご容赦ください。

次回の「コノノ通信Vol.4」は、コノノNo.1の母国コンゴに、
スポットを当ててみたいと思います。
本編の演奏会チケットも好評発売中!よいお席はお早めに!

水戸芸術館音楽部門主任学芸員 矢澤孝樹

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映画「ホテル・ルワンダ」公式サイト
http://www.hotelrwanda.jp/

*映画のご予約は、明日朝 9時30分より Tel. 029-231-8000 で
  当日券ご予約として承ります。お電話お待ち申し上げております。

*コノノNo.1公演のご予約は「ATM速報受信のお客さま専用 ご予約
  メニュー」から24時間無休で承っております。ご利用ください。
  下記コノノNo.1情報ページからもリンクいたしております。
http://www.arttowermito.or.jp/2006/ongaku/konono1j.html

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