これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date: Wed, 18 Oct 2006 12:14:52 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,02170] Yoshida Hidekazu Prize for 2006
To: atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id: <4925720B.0011D75F.00@david.arttowermito.or.jp>
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▼水戸芸術館ATM速報2006年10月18日発 ---------------

音楽・演劇・美術などの各分野で優れた芸術評論を発表した人に対し
て贈られる、第16回吉田秀和賞の受賞作品が以下のとおり決定いたし
ました。

・候補書籍の総数 125点
(音楽38点、演劇16点、美術29点、建築14点、映画17点、
  その他(文化史など)11点)

・贈呈式
  2006年11月18日(土)午後 3時30分より 水戸芸術館会議場

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第16回 吉田秀和賞 受賞作品
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有木 宏二『ピサロ/砂の記憶 -- 印象派の内なる闇』
(人文書館 http://www.zinbun-shokan.co.jp/ 2005年11月刊)

印象派の中心的画家の一人、カミーユ・ピサロ(1830-1903)の生涯を、
15世紀末イベリア半島を追放され、マラーノ(豚)と呼ばれた
改宗ユダヤ人の子孫として生まれた出生の原点からたどり、
ほとんど風景画しか描かなかった画業の奥に潜む「闇」と「光」の
部分まで迫る評伝。

貿易商人の息子としてカリブ海のセント・マーシャル島で
デンマーク国籍のポルトガル系ユダヤ人として誕生したピサロは、
紆余曲折の末、パリに出て画家を目指す。
モネ、セザンヌ、ルノワールらと出会い、それが1874年の印象派
結成につながる。
その温厚な性格ゆえ多くの友人から慕われ、
印象派の結節点ともいえるピサロだが、
その内面はキリスト教とユダヤ教にも距離をおくアナーキストでも
あった。

筆者は、膨大なピサロの書簡集を始め、多くの資料を読み込んだうえ、
ピサロの一見、静かな雰囲気をたたえているにしかみえない風景画を
支える「感覚(サンサシオン)」と「思想」へのこだわりを指摘する。
とかく「光」にばかり注目されがちな印象派研究に新たな視点をも
加えようとする労作だ。

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有木 宏二(ありき・こうじ)

1967年大阪市生まれ。
京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
現在、宇都宮美術館学芸員。
主に西洋近・現代美術の展覧会を担当。専攻は、芸術学。
主要論文に、『流氓ユダヤ』(『あうろーら』、21世紀の関西を
考える会)、『マラーノの絵画 カミーユ・ピサロのサンサシオン』
(『西洋美術研究No.4』、三元社)、『美しき『器』の形象 --
シャガールとユダヤ神秘主義』(「マルク・シャガール展」カタログ、
日本放送網株式会社)などがある。

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吉田秀和賞について(吉田秀和芸術振興基金により平成2年創設)
名称:吉田秀和賞
対象:音楽・演劇・美術などの各分野で、優れた芸術評論を発表した
      人に対して
正・副賞:正賞 表彰状、副賞 賞金 200万円

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これまでの受賞作品:

第 1回(1991年、平成 3年度)
  秋山邦晴「エリック・サティ覚え書き」
  青土社 http://www.seidosha.co.jp/ 1990年6月刊

第 2回(1992年、平成 4年度)
  持田季未子「絵画の思考」
  岩波書店 http://www.iwanami.co.jp/ 1992年4月刊

第 3回(1993年、平成 5年度)
  該当作品なし

第 4回(1994年、平成 6年度)
  渡辺保「昭和の名人 豊竹山城少掾」
  新潮社 http://www.shinchosha.co.jp/ 1993年9月刊

第 5回(1995年、平成 7年度)
  松浦寿輝「エッフェル塔試論」
  筑摩書房 http://www.chikumashobo.co.jp/ 1995年6月刊

第 6回(1996年、平成 8年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/0/35.html
  長木誠司「フェッルッチョ・ブゾーニ」
  みすず書房 http://www.msz.co.jp/ 1995年11月刊

第 7回(1997年、平成 9年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/200/256.html
  伊東信宏「バルトーク」
  中央公論社 http://www.chuko.co.jp/ 1997年7月刊

第 8回(1998年、平成10年度)
  該当作品なし

第 9回(1999年、平成11年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/800/800.html
  青柳いづみこ『翼のはえた指  評伝安川加壽子』
  白水社 http://www.hakusuisha.co.jp/ 1999年 6月刊

第10回(2000年、平成12年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1000/1056.html
  小林頼子
『フェルメール論 〜神話解体の試み』
  八坂書房 http://www.yasakashobo.co.jp/ 1998年 8月刊
『フェルメールの世界 17世紀オランダ風俗画家の軌跡』
  日本放送出版協会 http://www.nhk-book.co.jp/ 1999年 10月刊

第11回(2001年、平成13年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1200/1295.html
  加藤 幹郎
『映画とは何か』みすず書房 http://www.msz.co.jp/ 2001年 3月刊

第12回(2002年、平成14年度)
  該当作品なし

第13回(2003年、平成15年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1600/1678.html
  岡田温司『モランディとその時代』
  人文書院 http://www.jimbunshoin.co.jp/ 2003年8月刊

第14回(2004年、平成16年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1800/1857.html
  湯沢英彦『クリスチャン・ボルタンスキー 死者のモニュメント』
  水声社 http://www.suiseisha.net/ 2004年 7月刊

第15回(2005年、平成17年度)
  宮澤淳一『グレン・グールド論』
  春秋社 http://www.shunjusha.co.jp/ 2004年12月刊

第16回(2006年、平成18年度)
  有木宏二『ピサロ/砂の記憶 -- 印象派の内なる闇』
  人文書館 http://www.zinbun-shokan.co.jp/ 2005年11月刊

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吉田秀和芸術振興基金(事務局:水戸芸術館内)

・理事会
  理事長:吉田 光男    財団法人水戸市芸術振興財団副理事長
  理事:  佐治 信忠    サントリー株式会社代表取締役会長兼社長
  理事:  鈴木 繁      朝日新聞東京本社文化部長
  理事:  佐川 千鶴    佐川文庫館長
  理事:  福田 三千男  株式会社ポイント代表取締役会長

・審査委員会
  審査委員長:吉田 秀和  評論家・水戸芸術館館長
  審査委員:  加藤 周一  評論家
  審査委員:  林   光    作曲家

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