これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date: Thu, 13 Dec 2012 20:59:15 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,02872] Books sharing memories or feelings
To: atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id: <OF7B18208D.B773ACD5-ON49257AD3.0041AA16@GlobalDom1>
X-Mail-Count: 02872


▼水戸芸術館ATM速報2012年12月13日発 ---------------

「キュレーターが、アーティストによって作られた作品を選び、
美術館のなかで紹介することは、通常「評価」を意味する。だが、
下記の理由から、本展に限っては美術館の持つ「価値付け」の
権威的機能をいったん保留にすることができないものかと夢想する。
企画の性質上、本展は行動を起こしたアーティストを照射する。が、
だからといって、行動を起こしたか否かで単純に優劣を評したい訳
ではない。また、それと同じくらい、震災を受けて多くの市民活動が
行われたなかでアーティストによる活動だけがとりわけ優れていると
評価したいわけでもなく、アーティストを特別視することや
その神格化をめざすものでもない。
それよりもむしろ「展覧会」というメディアが「考えるための装置」
として機能する可能性に賭けたい。」
(竹久 侑、「3・11とアーティスト: 進行形の記録」展カタログ
 テキスト『本展の企画についての記録と考察』より)

生命の萌え立つ緑のバインダーに収められた『進行形の記録』集、
▼「3・11とアーティスト: 進行形の記録」展カタログ発売中です。
価格\1,900-(税込) 164ページ、A5サイズ
 バインダーのサイズ:縦230mm×横155mm×幅45mm
contents
 展示風景写真
 参加作家へ3つの質問からなるメール・インタビュー
 テキスト 鷲田清一(哲学者)、椹木野衣(美術批評家)
      畠山直哉(写真家)、竹久侑(本展キュレーター)
 東日本大震災にまつわる社会の出来事およびアーティストの活動年表
参加作家:荒井良二、遠藤一郎、開発好明、加藤翼、北澤潤、
 小森はるか+瀬尾なつみ、眞田岳彦、高山明(Port B)、
 タノタイガ、Chim↑Pom、椿昇、照屋勇賢、トーチカ、
 中島佑太+ビルド・フルーガス、ニシコ、畠山直哉、日比野克彦、
 藤井光、宮下マキ、村上タカシ(MMIX Lab)、ヤノベケンジ、
 山川冬樹、wah document
刊行:水戸芸術館現代美術センター
http://arttowermito.or.jp/gallery/gallery02.html?id=331

ネット通販のお申し込みは、当館ウェブサイトの下記ページより
お願いいたします。
(お客様情報が暗号化により保護されて送信されます。)
https://www.arttowermito.or.jp/sf/sendform.html

1. 件名は「3・11展カタログ購入 または 問い合わせ」と
 ご入力ください。
2. ご氏名、メールアドレス、お届け先の郵便番号とご住所、
 お電話番号をもれなくご入力ください。
 後ほど担当からご連絡いたします。
*ネット通販ご利用のお客様は、ヤマト運輸代金引換便での発送と
 なります。
 別途送料420円(北海道、東北の一部、西日本はお住まいの地域に
 より送料が変わりますので、お問い合わせください)
 +代引手数料315円がかかります。
*なお、通販のお客様にはあらかじめカードをセットしたカタログを
 お届け致します。

▼水戸芸術館ミュージアムショップ "コントルポアン"ブログ
http://www.arttowermito.or.jp/blog/contrepoint/

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「僕は、芸術の仕事というのは、今目の前に見えているもの、
あるいは見えていないものを契機としてものごとを想像する力、
今までそこになかったもの、誰も夢見たことのないようなものを
一瞬でも出現させる、そういう働きも芸術の根本的な仕事の一つだと
思います。だから今回のこと(3・11の東日本大震災、送信者補足)で、
想定外って言うことは、芸術に関する仕事をしている僕たちにとっても、
本当は、人ごとじゃないんだ。」
(吉田 秀和、音楽之友社「吉田秀和--音楽を心の友と」収録
 2011年4月1日 水戸芸術館全職員への挨拶より)

昨年『レコード芸術』誌に掲載されたロング・インタビューを中心に
著作紹介、書評、年譜をさらに拡充。亡くなる前日に書きあげられた
直筆遺稿全ページの写真掲載の他、折りにふれての談話も再収録。
"コントルポアン" はもちろん、全国の書店でお求めいただけます。
1,575円(税込)、完全カラー保存版
http://www.ongakunotomo.co.jp/kagutsu/k130.html

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優れた芸術評論を発表した人に対して賞を贈呈し、芸術文化を振興
することを目的としている「吉田秀和賞」。
第22回・平成24年度の受賞者が11月30日決定いたしました。
http://arttowermito.or.jp/minnano/katsu02.html?id=926

●第22回 吉田秀和賞 受賞作品
 新関 公子(にいぜき・きみこ)
『ゴッホ 契約の兄弟―フィンセントとテオ・ファン・ゴッホ』
(ブリュッケ 2011年11月刊)
著者略歴:1940年新潟県長岡市に生まれる。
1959年東京藝術大学美術学部芸術学科入学。1965年同大学院修士課程
修了、東京藝術大学付属芸術資料館(現大学美術館)に勤務(74年まで)。
1968年フランス政府給費留学生としてエコール・デュ・ルーヴルで
博物館学研修を受ける。1977年都留文科大学非常勤講師(87年まで)。
1982年横浜市美術館開設準備室勤務(87年まで)。1987年トキワ松学園
短期大学(現横浜美術大学)非常勤講師(2002年まで)。2002年東京藝術
大学大学美術館教授(08年まで)。2008年東京藝術大学名誉教授となる。


▼審査員選評

美しい成果
あらためてゴッホを論じる余地などあるのかと思う人は多いだろう。
狂人と紙一重の天才。生前には絵のほとんど賣れなかった貧乏画家。
耳切り事件。病院。悲劇の最期、etc。著者は学問の力と批評の力を
もって、特別の新資料によってではなくもっぱら『ファン・ゴッホ
書簡全集』を読み解くことによって、ゴッホ兄弟には画家と画商の
契約がはっきりと結ばれていたことを明らかにする。
この主要テーマにそって、ゴッホとゴーガンの「バトル(格闘)」に
光を当てたページ、フィンセントは精神病ではなくてんかんだった
ことを示すページは殊に読みごたえがある。着実な研究心と躍動する
批評精神。自序で予告した著者自身の自己との契約の達成がまた
すばらしい。

杉本 秀太郎

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ゴッホの絵は生前認められなかったがゆえに売れなかったと言われて
きた。が、著者はあれだけの画業を本当に同時代が認めなかったのか
と疑う。おかしいではないか。子供のように素朴な問いである。
そしてこの素直さが定説を確実にひっくり返してゆく。著者は、
ゴッホの絵が生前じゅうぶん玄人筋には認められ、将来高値を呼ぶと
見越されていたがゆえに、画商の弟がストックして売らなかったと
推理する。そのあたりを一次資料を駆使し詰めてゆく著者の手つきの
周到なこと!本書には童心の「なぜ?」と老練な刑事の丹念さとが
結合している。純真に疑ってこつこつ調べて常識を覆す。芸術のよき
研究と批評は第一級のミステリーにも通じる。傑作である。

片山 杜秀

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