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Date: Fri, 30 Oct 2015 18:01:37 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,03246] Yoshida Hidekazu Prize for 2015
Sender: tamamik@arttowermito.or.jp
To: atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id: <OFC52EB70B.8C3F7335-ON49257EEE.00314B83-49257EEE.00319634@GlobalDom1>
X-Mail-Count: 03246
▼水戸芸術館ATM速報2015年10月30日発 ---------------
音楽・演劇・美術など、芸術の各分野における優れた評論に対して
贈られる「吉田秀和賞」、第25回・平成27年度の受賞作品が、
全186点の候補書籍の中から決まりました。
http://arttowermito.or.jp/yoshida/yoshida01.html
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第25回 吉田秀和賞 受賞作品
椹木 野衣 『後美術論』
(美術出版社 2015年3月刊)
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椹木 野衣(さわらぎ ・のい )
美術批評家。1962年秩父市生まれ。
著書に『日本・現代・美術』(新潮社)、『シミュレーショニズム』
(増補版・ちくま学芸文庫)、『「爆心地」の芸術』(晶文社)、
『黒い太陽と赤いカニ―岡本太郎の日本』(中央公論新社)、
『戦争と万博』(美術出版社)、『美術になにが起こったか』(国書
刊行会)、『なんにもないところから芸術がはじまる』(新潮社)、
『反アート入門』(幻冬舎)、『新版 平坦な戦場で ぼくらが生き
延びること 岡崎京子論』(イースト・プレス)、『アウトサイダー
・アート入門』(幻冬舎新書)、『戦争画とニッポン』(会田誠との
共著、講談社)、『日本美術全集 第19巻 拡張する戦後 美術』
(責任編集、小学館)、『Don't Follow the Wind 公式カタログ
2015』(Chim↑Pom との共著、河出書房新社)など。
手がけた展覧会に「アノーマリー」展(レントゲン藝術研究所、1992
年)、「日本ゼロ年」展(水戸芸術館、1999-2000年)、「太郎の
なかの見知らぬ太郎へ」展(岡本太郎記念館、2006年)、「未来の
体温 after AZUMAYA」展(ARATANIURANO/山本現代、2013年)など。
現在、多摩美術大学教授。
https://twitter.com/noieu
▼審査員選評
まるごと非吉田秀和「好み」です。
だから「吉田秀和賞」にふさわしい。
決して逆説を弄しているのではありません。
水戸芸術館のアート部門は椹木野衣がゲストキュレーションをした
ときなど、扱いに困る事件がたびたび起こってもたじろぐことなく、
館長のたくみな采配の下で、いまや世界から注視される存在に
なっています。包容力があるのです。
このたびの著作『後美術論』のキーポイントは、後=ポストと
美術=アートをくっつけたところです。
記述されている様々な事件は過去半世紀にわたる、美術界と音楽界で
は鼻つまみとみられていた反社会的行為までを含むワイルドな
パフォーマンスばかりです。それが著者自らの「好み」とみえます。
べったりとその現場に踏み込んで叙述している。息もつかせぬ臨場感
があります。あげくにこれまでの20世紀芸術の通説が動転し、崩壊が
はじまる。これから何がうまれるのか、誰も説明できないところまで
もその所在が示されています。
少なくとも著者は水戸芸術館の出発した頃から、世代が上の私はその
前の四半世紀を、これらの事件の発生現場に生で立ち合っています。
登場人物も知っています。これらの事件の連鎖がポストアートと
名付けられている。これを著者自らの「好み」と表明していることに
注目して下さい。たんなる研究や報告ではなく、この報告そのものが
誰も真似できないプロジェクトであることを証すものです。
磯崎 新
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椹木野衣さんは乱世型の批評家だと思う。
批評家に必要なものは対象と視線と想像力。椹木さんが論じたくなる
対象は、力が有り余って定型から溢れ出してゆくもの。椹木さんの
時代への視線は、平時に破局の兆しを見つけ、非常時には破局を回避
しようとするよりも破局のインパクトのもたらす変革の可能性に賭け
ようとするもの。かくて椹木さんの想像力は、あらゆるものを貨幣と
交換可能にしようとし、原子力発電所の「事故からの復旧や将来に
わたる賠償や信用さえ、結局は金で解決される」現代に対して、
「無償の愛や目的のない旅によって絶えずどこか遠くへと向かおう
とする純粋な欲望の発露、決して一商品には置き換えられない無限
=夢幻への果てしない飛翔」を行おうと、ジャンル不詳の過剰なもの
と化してゆく尖鋭な「アート」を、常に挑ませる。
椹木さんが本書で描くのは結局、資本主義と「アート」の最終戦争。
これぞ「3・11」後の芸術批評である
片山 杜秀
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▼「吉田秀和賞」について
音楽を中心に芸術評論に多大な功績のあった吉田秀和氏の名を冠し、
1990年に創設された吉田秀和賞は、芸術文化を振興することを目的と
して、優れた芸術評論に対して賞を贈呈しております。
■対象 音楽・演劇・美術などの各分野で、優れた芸術評論を
発表した人に対して
■正賞 表彰状
■副賞 賞金 200万円
■審査委員 磯崎 新 建築家
片山 杜秀 評論家・慶應義塾大学法学部教授
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▼これまでの受賞作品:
第 1回(1991年、平成 3年度)
秋山邦晴「エリック・サティ覚え書き」
青土社 http://www.seidosha.co.jp/ 1990年6月刊
第 2回(1992年、平成 4年度)
持田季未子「絵画の思考」
岩波書店 http://www.iwanami.co.jp/ 1992年4月刊
第 3回(1993年、平成 5年度)
該当作品なし
第 4回(1994年、平成 6年度)
渡辺保「昭和の名人 豊竹山城少掾」
新潮社 http://www.shinchosha.co.jp/ 1993年9月刊
第 5回(1995年、平成 7年度)
松浦寿輝「エッフェル塔試論」
筑摩書房 http://www.chikumashobo.co.jp/ 1995年6月刊
第 6回(1996年、平成 8年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/0/35.html
長木誠司「フェッルッチョ・ブゾーニ」
みすず書房 http://www.msz.co.jp/ 1995年11月刊
第 7回(1997年、平成 9年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/200/256.html
伊東信宏「バルトーク」
中央公論社 http://www.chuko.co.jp/ 1997年7月刊
第 8回(1998年、平成10年度)
該当作品なし
第 9回(1999年、平成11年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/800/800.html
青柳いづみこ『翼のはえた指 評伝安川加壽子』
白水社 http://www.hakusuisha.co.jp/ 1999年 6月刊
第10回(2000年、平成12年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1000/1056.html
小林頼子
『フェルメール論 〜神話解体の試み』
八坂書房 http://www.yasakashobo.co.jp/ 1998年 8月刊
『フェルメールの世界 17世紀オランダ風俗画家の軌跡』
日本放送出版協会 http://www.nhk-book.co.jp/ 1999年 10月刊
第11回(2001年、平成13年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1200/1295.html
加藤 幹郎
『映画とは何か』みすず書房 http://www.msz.co.jp/ 2001年 3月刊
第12回(2002年、平成14年度)
該当作品なし
第13回(2003年、平成15年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1600/1678.html
岡田温司『モランディとその時代』
人文書院 http://www.jimbunshoin.co.jp/ 2003年8月刊
第14回(2004年、平成16年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/1800/1857.html
湯沢英彦『クリスチャン・ボルタンスキー 死者のモニュメント』
水声社 http://www.suiseisha.net/ 2004年 7月刊
第15回(2005年、平成17年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/2000/2023.html
宮澤淳一『グレン・グールド論』
春秋社 http://www.shunjusha.co.jp/ 2004年12月刊
第16回(2006年、平成18年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/2100/2170.html
有木宏二『ピサロ/砂の記憶 -- 印象派の内なる闇』
人文書館 http://www.zinbun-shokan.co.jp/ 2005年11月刊
第17回(2007年、平成19年度)
該当作品なし
第18回(2008年、平成20年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/2300/2399.html
片山 杜秀
『音盤考現学』(アルテスパブリッシング 2008年2月刊)
『音盤博物誌』(アルテスパブリッシング 2008年5月刊)
http://www.artespublishing.com/
第19回(2009年、平成21年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/2400/2495.html
岡田 暁生『音楽の聴き方』
中公新書 http://www.chuko.co.jp/ 2009年6月刊
第20回(2010年、平成22年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/2600/2610.html
白石 美雪『ジョン・ケージ 混沌ではなくアナーキー』
武蔵野美術大学出版局 http://www.musabi.co.jp/
2009年10月刊
第21回(2011年、平成23年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/2700/2727.html
椎名 亮輔
『デオダ・ド・セヴラック----南仏の風、郷愁の音画』
アルテスパブリッシング http://www.artespublishing.com/
2011年9月刊
第22回 (2012年、平成24年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/2800/2872.html
新関 公子
『ゴッホ 契約の兄弟―フィンセントとテオ・ファン・ゴッホ』
ブリュッケ 2011年11月刊
第23回(2013年、平成25年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/2900/2983.html
末永 照和
『評伝ジャン・デュビュッフェ アール・ブリュットの探求者』
青土社 http://www.seidosha.co.jp/ 2012年10月刊
第24回 (2014年、平成26年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/3100/3124.html
通崎 睦美
『木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」』
講談社 http://www.kodansha.co.jp/ 2013年 9月刊
第25回 (2015年、平成27年度)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-info/3200/3246.html
椹木 野衣
『後美術論』
美術出版社 http://book.bijutsu.press/ 2015年 3月刊
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審査委員
磯崎 新(いそざき・あらた)
建築家。1931年大分市生まれ。
1954年東京大学工学部建築学科卒業。丹下健三に師事し、博士課程
修了。
1963年磯崎新アトリエを設立。以来、国際的建築家として活躍。
世界各地で建築展、美術展を開催し、また多くの国際的なコンペの
審査委員、シンポジウムの議長などを務めた。カリフォルニア大学、
ハーバード大学、エール大学、コロンビア大学などで客員教授を
歴任。建築のみならず、思想、美術、デザイン、文化論、批評など
多岐にわたる領域で活躍。 代表作に、群馬県立近代美術館、
ロサンゼルス現代美術館、水戸芸術館、パラウ サンジョルディ
(バルセロナオリンピックスタジアム)、クラコフ日本文化技術
センター、奈義町現代美術館、京都コンサートホール、北京中央
美術学院美術館、上海交響楽団コンサートホールなど多数。
2013年、過去50年間に渡り書いてきた文章を編集した『磯崎新建築
論集』(岩波書店)を刊行。
片山 杜秀(かたやま・もりひで)
音楽評論家、思想史研究者。1963年仙台生まれ。東京で育つ。
慶應義塾大学 大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。
専攻は政治学。慶應義塾大学法学部教授。 著書に『音盤考現学』
『音盤博物誌』『クラシック迷宮図書館(正・続)』『線量計と
機関銃』『国の死に方』『未完のファシズム』『近代日本の右翼
思想』『ゴジラと日の丸』ほか。
朝日新聞、『レコード芸術』などで音楽評を執筆するほか、NHK-FM
『クラシックの迷宮』などでパーソナリティをつとめる。 2006年、
日本近代音楽研究の業績により京都大学人文科学研究所から人文科
学研究協会賞を、2008年、『音盤考現学』『音盤博物誌』により
吉田秀和賞お よびサントリー学芸賞を、2012年『未完のファシズム』
により司馬遼太郎賞 を受賞。
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