これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date:  Sun, 19 Sep 1999 21:04:46 +0900 (JST)
From:  tamamik@arttowermito.or.jp (Tamami Kojima)
Subject:  [atm-info,00786] Ground Zero Japan (first half)
Sender:  jun@re.soum.co.jp
To:  info: ;
Message-Id:  <199909191204.VAA25568@juran.asahi-net.or.jp>
X-Mail-Count: 00786

▼ATM速報1999年9月19日発--------------------------------

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「日本ゼロ年」に向けて -- 椹木 野衣
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「日本ゼロ年」の〈ゼロ〉は、既成の枠組みをリセットすることを意味し
ています。単刀直入にいって、ここでの「既成の枠組み」とは、日本にお
ける「現代美術」(ないしは「現代アート」)のことです。いまでも、
「現代美術の…」といった展覧会は頻繁に目につきます。しかし、そこで
使われている「現代美術」という名称がいったいなにを指し、そもそもい
つごろから使われるようになったかについては、さまざまな解釈こそあれ、
あらためて問われることはありません。もちろん、本展が開かれる場所も、
「現代美術センター」であることにはかわりません。にもかかわらずここ
で、あえて、この「枠組み」そのものを問おうとしていることには、わけ
があります。ひとつには、「現代美術」という枠組みが今日なお、本当に
有効であるうるのかどうか、ということ。そしてまた、もし有効でないと
したら、それはなぜなのか。また、そうだとして、それでは「現代美術」
にかわって、どのような考え方を採用するべきなのか?
これらのことを考えるために、ここでは、戦後の日本の美術を考えるにあ
たって、いくつかの仮説を採用します。まず第一に、「戦後」という時間
軸の中で、1955年と1968年、それから1990年に大きな切断面があるという
ことです。
1955年は、俗に言う「55年体制」が確立された年にあたり、それは、敗戦
国であった日本が国際社会への復帰を完了すると同時に、冷戦構造におけ
る「西側」の「世界」に組み込まれたことを意味します。「現代美術」と
いう言葉が「世界」や「国際性」といった言葉と入り交じりながら、人々
の口にのぼり始めたのも、このころのことだと思われます。つまり、「現
代美術」という枠組みを支えているのは、ひとつには、戦後の国際社会に
おける冷戦のイデオロギーであることが考えられます。こうした意味での
「現代美術」は、1968年前後に起こった新左翼運動の敗退を期に決定的な
ものとなり、社会的地平から自立した領域に閉じこもることによって、今
日に至るまで数々の制度に支えられながら、「規制の枠組み」をかたちづ
くりました。
けれども、冷戦は、1990年前後に起こったベルリンの壁の崩壊やソ連邦の
消滅を受けて、短期間のうちに解体してしまいました。そしてそれにとも
ない、政治や経済をはじめとする国際社会の再編成の中で、日本の社会は
大きく揺らいでおり、それにともない、美術を語る道具立てや作品をめぐ
る風景もまた、大きく変化しています。
本展は、すでに示した理由から、そうした変化をなお、「現代美術」の一
動向ないしは歴史的段階として括ることはしません。それは、より大きな
構造変化に伴う、「現代美術」なき世界へと、わたしたちが突入しつつあ
ることを意味するのではないでしょうか。
以上のような観点にたって、「日本ゼロ年」では、「現代美術」が暗黙の
うちに採用してきたいくつかの前提をリセットすることを提案します。ひ
とつには、「現代美術」の自立性や、それを支えてきた既成の美術史、作
品が発表されるコンテキストや需要層といったものをあらかじめ前提とせ
ず、あらゆるジャンルで全方位的に活動してきた(しうる)作家に焦点を
当てる、ということ。もうひとつには、ジャンル固有の歴史的発展や現代
美術の純粋性を前提としない以上、そこでは、美術とデザインとサブカル
チャーとを問わず、あらゆる様式はたがいに等価なものとみなされ、「様
々なる意匠」として自由にサンプリングされ、リミックスされる、という
こと。また、こうしたことを可能とする「構造変化」があったとして、こ
うした変化に下部構造的に規定されるだけでなく、そのような変化をあら
かじめ先取りし、それにともなう混乱に、今後とも、あるモデルを提示し
うる、ということ。
こうしたことを通じて、既成概念化した「現代美術」への拘泥とも、冷戦
崩壊以後の安易なグローバリズムへの参入とも異なる可能性を、「日本」
という言葉をキーに探ってみようというのが、本展のねらいです。
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展覧会概要
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会期:1999年11月20日(土)〜2000年1月23日(日)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
開館時間:午前9時30分〜午後6時30分(入場は午後6時まで)
休館日:月曜日、年末年始(12月27日〜1月3日)
主催:水戸芸術館現代美術センター
助成:財団法人花王芸術・科学財団
協賛:キリンビール株式会社、トヨタ自動車株式会社
協力:イノウエ兄弟社、クツワ株式会社、セイコーエプソン株式会社、
株式会社創夢、武松幸治+E.P.A.、光平鉄工株式会社、
有限会社モリタ鉄工
企画:椹木野衣(美術評論家)
展覧会担当:
森司(水戸芸術館現代美術センター学芸員)
水谷みつる(水戸芸術館現代美術センター学芸員)
入場料:一般800円、前売り・団体20名以上600円
中学生以下・65歳以上・心身障害者の方は無料
H.T.P.1000円(15歳以上20歳未満の方が対象の1年間有効パス)
チケット・H.T.P.の発売:
JR東日本みどりの窓口、びゅうプラザ
水戸芸術館チケットカウンター

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第1室
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岡本太郎(1911年生―1996年没)
最晩年の彫刻「哄笑」(1994年)と、絵画「原始」(1958年)、
「雷人」(未完)、他を展示します。
土壁製の「哄笑」は穴の開いたトンネルの形をしており、観客は中をくぐ
ることができます。
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小谷元彦(1972年生)
日本の近代木彫にも想を得た、新作の木彫作品を複数点、発表します。
びっしりと文様に覆われた人物の横で、 3メートルを超す高さから木の滝
が音もなく流れます。
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第2室
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成田亨(1929年生)
60年代に始まった特撮テレビ番組「ウルトラQ」「ウルトラマン」
「ウルトラセブン」の怪獣デザイン原画約100点を展示します。
作家の手により保管されてきた「レッドキング」「バルタン星人」
「ジャミラ」など不滅の怪獣たちの貴重な原画が、公立の施設では初めて
展示されます。
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第3室
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大竹伸朗(1955年生)
天井高の高い 3室の空間を生かしたインスタレーションです。拾い集めた
ゴミで表面を覆い尽くされた「網膜」(1991 -93年)が上方でゆっくりと
回転し、そのまわりを新作が取り囲みます。屋外では、芸術館の建物の正
面に、ネオン管が夜空に光る「宇和島駅」(1997年)の看板を掲げます。
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第4室
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できやよい(1977年生)
フィンガー・プリントと細筆でびっしりと描き込まれた明るくポップな細
密画と、「まっさん」とよばれる紙粘土のオブジェで、空間を埋め尽くす
インスタレーションを発表します。
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第5室
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会田誠(1965年生)
戦争画を取り上げ、さまざまなスタイルを援用して屏風絵に仕立てた既発
表の「戦争画RETURNS」シリーズ5点(1995-6年)に、新作を加えて、同シ
リーズの全貌を紹介します。
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横尾忠則(1936年生)
コレクションしている滝のポストカード数千枚が、天井から流れ落ちる滝
のように展示され、異空間をつくり出します。裏見の滝を思わせる回廊に
は、滝をモチーフにしたテクナメーション作品と、赤い色の絵画のシリー
ズから「星の子」(1996年)、「宇宙蛍」(1997年)などが並びます。
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ワークショップ
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ヤノベケンジ(1965年生)
巨大シェルター「ブンカーブンカー」(1998年)を新ヴァージョンで見せ
る他、史上最後の自販機「サヴァイヴァル・ガチャポン」(1998年)、ガ
イガーカウンター付き「アトム・カー」(1998年)、写真作品「アトムス
ーツ・プロジェクト」(1997-8年)を展示します。
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第6室
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東松照明(1930年生)
海岸にコンピュータ・チップのキャラクターを置いて撮影した「キャラク
ターP・終の住処」シリーズ(1998年)に撮り下ろしの新作を加え、60点
弱を展示します。すべてインクジェットによるプリントで、長い廊下状の
空間を生かした写真と音とのコラボレーションとなります。
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第7室
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村上隆(1962年生)
シャッターが開くとナイター用照明が目も眩むような強烈な光を放つ「シ
ーブリーズ」(1992年)を、壁面のペインティングを含む新たなセッティ
ングで見せるインスタレーションです。
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ギャラリー内外
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飴屋法水 (1961年生)
新作を発表する予定です。

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明日20日(月曜日)は休館させていただきます。

http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---