これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date:  Thu, 9 Dec 1999 21:26:44 +0900
From:  tamamik@arttowermito.or.jp
Subject:  [atm-info,00847] Reading session "Fuyu no, Hikari no" Diary #1
To:  atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id:  <49256842.0043B87E.00@david.arttowermito.or.jp>
X-Mail-Count: 00847

▼ATM速報1999年12月9日発--------------------------------

「水戸芸術館で働きたい」というメールをいただくことが年を追うごとに
増え、ご注目に心から感謝申し上げる次第です。
(*現在のところ職員募集の予定はありません。募集の場合は速報させて
    いただきます。)

現在は欠員補充時のみの職員採用のため、欠員数の100倍をこえるご応募
をいただくこともあります。
財団職員は、事業の企画やマネジメントを行う 、3部門の学芸員、劇場や
ホールの技術を担当する舞台技術係員、予算管理や人事、施設基盤の保守
や整備、お客様へのサービス等、館全体の管理業務を担当する事務局員に
分かれます。

今回お届けする、演劇部門学芸員・長山泰久の日記から、劇場企画を担当
する職員の実際の毎日のほんの一部分でも、ご想像いただければ幸いです。

"Received: from david.arttowermito.or.jp
by david.arttowermito.or.jp with SMTP id 49256840.004ED04A;
Tue, 7 Dec 1999 23:20:51 +0900
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12/4(土)
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とうとう12月になってしまった。
劇団一跡二跳の公演と重なってはいるが、「子供演劇アカデミー」の
稽古は、稽古として、毎週やってくる。
今月23日に予定している「朗読会」のネタを、いい加減、きちんと
固めなければ。
後味が良く、冬の室内のように親密な感じ、
大切なものを持っているという実感の、その幸せさ。
などどいう、
漠然としたイメージ、つつまれたい空気だけが先にあって、
「ふゆの、ひかりの」というタイトルは決めたものの、
それには、どういう言葉、どのテキストが合っているのか、
いまひとつ、確信が持てない。
ACM百人劇場という空間の中で、どうすれば、いいか。

明日は稽古日だ、というのに。ちょっと焦る。
「一跡二跳」の公演を終えてから、自宅に帰り、いろいろ考える。

声を出してテキストを読む、音楽をかけて、あるいは消して。
思いつく言葉を、ただノートに羅列していく。

掴まえようとしている「それ」の一部、
たとえばそれが動物だったら尻尾とか、そういうところまでは
たどりついているような、触れているような気がするんだけれど。

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12/5(日)
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今日は稽古日。稽古は朝9時からだが、このところ少々遅刻ぎみ。
稽古場に遅れて入るのは、いちばん良くないこと、とわかってはいる。
現在「子劇」は66名の生徒を2つのクラスに分けて稽古をしている。
つまり1クラスには30名を超える生徒がいる。
単純に、まず、この人数に圧される。
そして、90分または180分の稽古時間の組み立てに悩む。
しかし、ひるんでいると、その「すきま」が生徒に伝わる。
それが実は、お互いを「ゆるませて」しまうのだ。

だから自分は「明らかである」必要があるのだ。絶対に。
・・・少なくとも、そう思ってはいるんですが、ね。

今朝、風呂に入りながら読んでいた文庫本の一節が、気になる。

それは、江國香織「流しのしたの骨」のこんな一節。
・・・私たちは読書ごっこを中断し、それぞれ本から顔をあげて言った。
読書ごっこというのはなにかというと、簡潔に言えばただの読書だ。
でも、私たちは「ごっこ」が好きで、たいていのことは「ごっこ」に
してみることにしている。そうすると、事情が全然ちがってくるのだ。
たとえば一人ずつばらばらに本を読む場合でも、はじめに「読書ごっこを
しよう」と言って始めれば、俄然一緒に遊んでいるという感じがする。
本を読んでいるあいだずっとだ。大切なのはそこだった。
(江國香織「流しのしたの骨」新潮文庫)

繰り返して読む。湯冷めしそうになりながら。
多分、これで、大丈夫だ。この一節で、見えてきた、気がする。
読書という「一人の作業」を「分け合う」こと、
それでいて、それぞれの頭の中にはさまざまな「声たち」が鳴っている、
そういう読書する空気を、現出させたい。

こういう瞬間には、髪を乾かす間ももどかしく、稽古場へ気が急く。
(だから髪を切ったわけではないんですが。←蛇足)

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12月23日(木)16:00 入場無料
子供演劇アカデミー+市民演劇学校 朗読会『ふゆの、ひかりの。』
[会場]エントランスホール
[出演]子供演劇アカデミー及び市民演劇学校受講生

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昨日は送信を休ませていただきました。

http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---