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Date: Tue, 4 Apr 2000 20:16:36 +0900
From: tamamik@arttowermito.or.jp
Subject: [atm-info,00924] "Three Sisters" Note 2 by Nagayama
To: atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id: <492568B7.003DB06B.00@david.arttowermito.or.jp>
X-Mail-Count: 00924
▼ATM速報2000年4月4日発----------------------------------
From: NAGA
Subject: 「三人姉妹」のこと
Date: Tue, 4 Apr 2000 08:50:52 +0900
おはようございます。
遅くなりましたが「三人姉妹」の話を。
大阪、東京、と観てまいりましたので。
3/27(月)
「子供演劇アカデミー」漬けの日々は前日で終わり。
次の企画が待ち構えているのに、なかなか気持ちが切り替わらない。
1年間に渡った「子劇」は日常のレベルで自分にしみ込んでいた。
こういう時にはどうするか。環境を変えてしまう。移動をする。
そういうわけで、大阪へ。
大阪、天王寺。近鉄百貨店あべのはし店の中の「近鉄アート館」。
蜷川幸雄演出「三人姉妹」大阪公演、楽日。
特にこれといった大事件ではないが、日々の暮らしの中で
気持ちにさざ波をたてることは、ひっきりなしに起こる。
それに振り回され、それでも「生きていかなければ」ということだけは
忘れない。いや忘れられない、忘れないことでようやく立っていられる
ような、そういう人々。
その人々がきっちりとそこにいた。
上演時間は休憩を含めて3時間。
終演後には気分の調律がすっかり済んで、
街の喧噪を少しうるさく思いながら、劇場を後にした。
そして。
4/2(日)
日曜夕方の渋谷はたとえこの場所で何年間か仕事していた身にとっても
イライラするほどの人込みと渋滞。
スタジオコクーンは、シアターコクーンなどがあるBunkamuraとは
渋谷駅をはさんでちょうど反対側、明治通り沿いにある。
本来は稽古場なので、楽屋のスペースにも苦労し、観客のためには
トイレも備えてはおらず、通りを隔てたビルのトイレを案内されたりする。
「三人姉妹」東京千秋楽。
ほんの数日前に観た「三人姉妹」と同じものかと、まさに目を見張った。
それはたとえば路上で何気なく聞こえてきた音楽を
あらためてヘッドフォンを着けて聴くような違い、と言えばいいのか。
ここにこんな楽器の音が入っていたのか、
ここはこんな歌詞だったのか、こういうブレスをしていたのか、
「聞こえる」と「聴く」がそれくらい違うような「差」。
「三人姉妹」はそのように「あらためて」そこで行なわれた。
思えば「近鉄アート館」は、
多くの小劇場演劇集団が大阪公演の場としてきた劇場ではあるが、
その空間は「小空間」というよりは「中劇場空間」で、
けっこうな広さがある。実は。
それはそれで居心地のよい場所ではあるが、
この「三人姉妹」にはほんのすこし大きかった。
ほんの少しではあるが、決定的に違う。
たとえば一瞬ためらう手の震え。めぐらす視線の速度。
そういったものを少しずつ「拡大」していたのだと思う。
それらが、すべてあるべき大きさや速度をもって、
あらためて立ち上がった。そういう印象。
それが渋谷での「三人姉妹」だったと言える。瞠目。
それぞれ悪人ではないのにふがいない男達。
正直でその分低俗なナターシャ。
「ここではない、モスクワという別天地」を求めながら
決して到達しないだろうことをも予感しつつ、
しかもそれでも夢見ることを止められない。
それでもひたひたと迫ってくる日常に埋もれていく。
その「姉妹」。その眼差し。その声。息遣い。
なるほど「最高のキャスティング」と断言されただけの
ことは十分にある。絶品。
3時間は決して長く感じられず、彼ら彼女らと別れがたく。
「三人姉妹」渋谷発。大阪経由。渋谷リターン、水戸着。
大阪>渋谷と空間が変わることで明確になった
演劇本来の意味。一回性の、ライブの、存在の仕方。
水戸ではどう顕われるのか。
以上がそれぞれの日の「長山ノート」です。
大阪で「?」と思ったいくつかのことが
渋谷では予想を上回る洗練をくわえられていたのには、
本当に驚きました。
高橋、村井、松本、荻野目各氏がまず良くて、
イリーナ役の新人・川本氏がとても新鮮。
そして何より、原田氏がすばらしい、です。
企画当初から言われていた「水戸が一番見やすい」というのは
はたして本当かどうか、その検証も含めて、
実に楽しみです。
(演劇部門学芸員 長山泰久)
http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---