これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date:  Sat, 20 May 2000 11:14:21 +0900
From:  tamamik@arttowermito.or.jp
Subject:  [atm-info,00956] "V. O." Costumes / Nagayama Nikki
To:  atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id:  <492568E5.000C0AB6.00@david.arttowermito.or.jp>
X-Mail-Count: 00956

▼ATM速報2000年5月20日発--------------------------------

さて、休日をどう過ごそうか、とお考えの方に。
もちろん水戸芸術館へ、ぜひいらしていただきたいのですが、外から
館を見ていただくための情報を、おなじみとなりました長山日記から
お届けします。
*長山日記:演劇部門学芸員・長山泰久から主に深夜、小島宛に送ら
れてくる長文の真情の吐露形式の制作日記メール。念のため、小島と
の交換日記では全然ありません。

----- Original Message -----

From: NAGA
Subject: 長山日記(番外)
Date: Fri, 19 May 2000 02:17:33 +0900 (JST)

小島さん、こんばんは。
水戸の企画の話ではないのですが、
話の種に、是非。

5月18日(木)から23日(火)まで
新宿タカシマヤ10Fにて
「ひびのこづえ<テロメラーゼ>展」が開催されています。
ひびのこづえ氏がこれまで「衣裳デザイナー」として
してきた仕事を一覧する展覧会です。
野田秀樹、スターダンサーズバレエ、フィリップ・デュクフレ、
そしてエルヴェ・ロブ。彼らの作品への参加。
コム・デ・ギャルソンのパリ・コレクションへの帽子の提供。
もちろんあの求人雑誌の表紙を飾り続けたシリーズ。
それらを一挙に観ることができる展覧会です。
展覧会限定のTシャツなどを販売するショップも併設されています。

ひびのこづえ氏にお仕事を依頼したのは、
水戸芸術館ACM劇場で初めて現代ダンスの作品をつくるという時
でした。
94年にエルヴェ・ロブが「メイド・オブ」という作品を発表して
それを観て我々は彼に「日本人の舞踊家で、この劇場で」作品を
つくることを依頼しました。
その申し出を受けてくれた彼とは、
翌95年6月の「現代ダンスフェスティヴァル」の直後から作業を
始めるべく打合せを進めましたが、そのかなり早い段階で、
エルヴェから出た条件が「衣裳は日本人のデザイナーでいきたい」
ということでした。
ダンスの衣裳は(本来、バレエでも社交ダンス、競技ダンスでも)
それが身体表現のモノであるが故にいろいろな制限があり、
しかも、この作品はあらかじめ日本人もフランス人も出演し、
お互いの国の複数の場所で公演することを目指していましたから、
さらに、条件は複雑でした。
名前はいろいろ挙がるものの、それぞれ予想出来過ぎてしまったり、
舞台劇や映画の衣裳家的でありすぎたり、
あまりにもファッション・デザイナーであったり、
さらに、私自身に、
「日本人の、若い(というのがどのくらいかは別として)世代が
見ても『現代的、現在的』だと思うもの、あるいは見たことないと
思うもの」を作りたいという希望もありましたから、
ほんとうに悩みました。
水戸芸術館の誰に相談するより先に、
来日するエルヴェを迎えに行った成田から水戸への車中で
「内藤こづえ(当時彼女はその名前で仕事をしていました)
作品集」を見せ、自分の考えを話し、水戸芸術館に着くやいなや
野田氏の舞台のビデオを見せた、というのをよく覚えています。
エルヴェがかなり興味をしめしたらしいところで、
今度は内藤(当時)氏への依頼に当時引っ越したばかりの彼女の
アトリエへ伺いました。そのときエルヴェについての資料は2本の
作品ビデオのみでした。
新しいものをつくる、ということはすべて可能性だけの話ですから、
それぞれの人間の「目」と「言葉」「熱」と「計算」を五感を
使い倒して測り合うようなものです。
・・・その結果は「VO」になり、日仏米版へ拡大され、
さらにフランス国立リヨン・オペラ・バレエにエルヴェが振付を
提供した新作「Miss K 」でも共同作業が行なわれたのでした。
一見しても、何度見ても、着用しても、不思議で美的なのか
そうでないかの瀬戸際のような形を見せる彼女の衣裳は、
それだからこそ、人間の身体というものをより強く意識させ、
その身体についての意識そのものを拡大、革新する、気がします。

ひびの氏(日比野克彦氏とのご結婚により改名して仕事をして
います)の衣裳の最新作は野田秀樹氏の「カノン」でしたが、
ここでの彼女の衣裳は、またひとつ大きな変化をしたように
見受けました。
それまでの「絵が服になっている」から
「絵」と「服」というそれぞれが自立したように、
またひとつ自由になったように、私には見えました。

展覧会場には「VO」の映像も流れ、エルヴェからのメッセージも
あります。
短い会期ですが、水戸芸術館で開催中の「森英恵展」と同じく、
「映像ではわからない手仕事の力、気配」をお確かめいただければ、
と思います。

----- End of Message -----

この日記を受信して慌てて、ひびのこづえ氏デザインの衣裳による
"V. O. (Version Originale)" 97年ダンスシーンを集めたページを
作り始めました。
すみません、まだできてませんが、数日中に下記でご覧いただける
ようになります。
http://www.arttowermito.or.jp/play/voimgj.html

今はまだNot Found状態です。お許しください。

http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---