これまでにお送りした水戸芸術館ATM速報

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Date:  Wed, 24 May 2000 18:46:16 +0900
From:  tamamik@arttowermito.or.jp
Subject:  [atm-info,00959] Note: "Nogare wa Setsuna, Hisoyaka no Maerchen"
To:  atm-info@arttowermito.or.jp
Message-Id:  <492568E9.0035805E.00@david.arttowermito.or.jp>
X-Mail-Count: 00959

▼ATM速報2000年5月24日発--------------------------------

ACM新作『逃れは刹那、密やかの君−』

「この本を書き上げたあとに、あの17歳の少年による婦人殺害事件と
バスジャック事件が起きた。とても驚いた…」

ACM新作『逃れは刹那、密やかの君−』について、取材インタヴュ−を
受けた作・演出家長谷川裕久のコメントです。

今回の新作を含めたここ数年の書き下ろしの戯曲で、長谷川裕久は作品
のテ−マに、人間のものの見方の不安定さを取り上げています。
つまり、世の中でおこる出来事は、見方によっては容易にその虚と実が
逆転してしまう。その逆転する瞬間が、ドラマの根幹を成すクライマッ
クスとして観客に提供される。このことが演劇を創作する上での、最も
重要な要素であると長谷川は考えています。『逃れは刹那、密やかの君
−』に登場する人物は全て、過去に何らかのトラウマを持っています。
そのトラウマによって、自分では気がつかないうちに、仮想の現実と日
常の虚構に苦しんでいます。その苦しみの原因を見つけることができな
いまま、夜伽の物語に救いを求めるのですが...。

事件を起した少年たちが、何を考え、行動に移したのか定かではありま
せんが、報道されている事件にいたるまでの経過をみると、彼らが何ら
かのトラウマティックな傷を負っていることは容易に想像できます。
しかし、そのトラウマを自覚するまでにはいたらなかった。あるいは、
気付いてはいたけれど、どう苦しめばよいのか分からなかった。事件は
そんな時に起きました。現実と虚構の「間」で、何かに救いを求めるこ
とができなかったのかも知れません。

虚と実の逆転が、虚構を演じる芝居ではなく、現実のなかで起きてしま
った瞬間に、ドラマはまたしても現実の前に敗北するのでしょうか...。

出来事に対する人間の不安定なものの見方、そして現代社会の不安定な
行く末をリアルに感じた人間は、一体何をすべきなのか。
長谷川裕久が新作『逃れは刹那、密やかの君−』で描いている登場人物
たちは、そのことを雄弁に語っているのか?
あるいは、ただひたすら逃れるばかりなのか?

ご期待下さい。

演劇部門学芸員 桜井琢郎


水戸芸術館 開館10周年記念事業
ACM百人劇場シリーズ・6/ACM新作
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逃れは刹那、密やかの君−
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http://www.arttowermito.or.jp/play/nogarej.html
6月 2日(金)19:00 HASEGAWAヴァージョン
6月 3日(土)19:00 hirohisaヴァージョン
6月 4日(日)16:00 HASEGAWAヴァージョン
6月 9日(金)19:00 hirohisaヴァージョン
6月10日(土)19:00 HASEGAWAヴァージョン
6月11日(日)16:00 hirohisaヴァージョン
6月16日(金)19:00 HASEGAWAヴァージョン
6月17日(土)19:00 hirohisaヴァージョン
6月18日(日)16:00 HASEGAWAヴァージョン
一般2,000円/学生1,000円 (全席自由)
館チケット予約センター Tel.029-225-3555(9:30〜18:00、月曜休)
mailto:ticket@arttowermito.or.jp
*メールでのご予約は思い立たれたらいつでもお送りください。
様式のご請求も、お手数ですが上記アドレスまでお願いいたします。

http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html 次回配信をお楽しみに!---